身元特定の効率化を 科捜研職員が博士号 テーマはDNA鑑定
熊本県警の科学捜査研究所の職員、興梠(こうろき)聖哉さん(40)が九州大学大学院から博士号を授与された。学位論文のテーマはDNA鑑定。DNAとは遺伝情報を構成する物質で、事件の解決や身元が分からない遺体の特定に今や無くてはならない存在だ。その分析をより効率よくやりたいという思いが博士号につながった。 【図】奈良公園の鹿に独自の特徴 千年超の歴史、DNAと資料でしかと確認 興梠さんは、総勢約20人の科捜研で法医係として主にDNAの分析を担当する。事件や事故の現場に残された、血液はもちろん唾液(だえき)などの体液からDNAを取り出し個人識別にいかす。 しかし、微量だったり、複数の人物の分が混在していたりして、分析は簡単ではない。身元の特定では、遺体が白骨化していて、骨から取り出さねばならないこともある。 宮崎県高千穂町出身。九大大学院の修士課程で遺伝子について研究した後、延岡市職員になった。しかし、「科捜研に入りたい」という思いが捨てきれなかった。熊本県警を第一志望にし、何度かの受験の末、2015年に採用された。 その後、鑑定技術をより良くするために研究したいと考え、九大大学院の博士課程に入った。科捜研の仕事をしながらの研究なので、博士論文を書き、学位を受けるまでに6年半かかった。 論文では、新型コロナの感染を調べる手法として有名になったPCR技術に注目。どう工夫すればDNA鑑定の有効性を高められるかを論じた。9月25日付で博士号を授与された。 興梠さんは「現時点では、効率化の可能性が出てきた程度。さらに研究と実践を重ねて、多くの警察で使える技術にしていきたい」と話している。(森北喜久馬)
朝日新聞社