<甲子園交流試合・2020センバツ32校>鳥取城北、明徳義塾に惜敗 粘り最後まで /鳥取
兵庫県西宮市の阪神甲子園球場で「2020年甲子園高校野球交流試合」(センバツ交流試合)が開幕した10日、鳥取城北は第2試合で明徳義塾(高知)と対戦した。看板の打線が八回表に4点を挙げて逆転したが、1点リードで迎えた九回裏に2点を奪われ、惜しくもサヨナラ負け。粘り強さを発揮した選手たちを、スタンドの保護者や部員らは温かい拍手でねぎらった。【野原寛史】 【真夏の熱闘】交流試合の写真特集はこちら 保護者やベンチ入りできなかった野球部員らのみ入場した三塁側スタンドの嵐のような手拍子に後押しされ、鳥取城北打線が真価を発揮した。八回1死満塁。3番の河西威飛(いぶき)選手が、右中間を切り裂く逆転の2点適時打。さらに4番の吉田貫汰主将、5番の安保龍人選手(いずれも3年)も連続適時打。それぞれ塁上でほえた。一挙4点を奪い、スタンドの熱気は最高潮に達した。 明徳義塾の先発は大会屈指の好投手。立ち上がりに吉田主将の適時打で先制した後は、球速こそ120キロ台ながら厳しいコースへの精密なコントロールに苦しんでいた。一方、鳥取城北の先発・松村亮汰投手(3年)は6回2失点と粘投。七回から登板した左腕の阪上陸投手(3年)が3者凡退で流れを作り、八回の攻撃前の円陣で河西選手が呼び掛けた。「チャンスで自分に回してくれ!」 ナインは一丸になった。先頭の阪上投手が内野安打で出塁。さらに安打と死球で好機が広がり、新型コロナ対策で声援を送れないスタンドから自然に手拍子が湧き起こった。そして河西選手。「メンバー外の部員のためにも」と念じて逆転打。スタンドに向かってガッツポーズした。 1点差に追い上げられた九回裏の1死一、二塁のピンチ、外野に回っていた阪上投手が再びマウンドへ。その2球目を捉えられ、前進守備を敷いていた河西選手の頭上を無情にも越えた。阪上投手は天を仰いでホームベース近くで崩れ落ちた。激闘が終わった。 選手たちがスタンドに向かって一礼すると、八回攻撃時を上回る大きな拍手。吉田主将の父勉さん(49)は「最後に甲子園で城北のチームカラーを見せてくれたのは立派。誇らしい」とたたえ、河西選手の父雄一郎さん(43)は「結果は天国から地獄だったが、息子が打った時は家族でガッツポーズした。お疲れ様」とねぎらった。 ……………………………………………………………………………………………………… ■熱球 ◇先発の大役まっとう 松村亮汰投手(3年) 6回を投げ8四死球と球は荒れた。しかし「横綱級」の強豪を相手に被安打ゼロでわずか2失点。前日に言い渡された先発の大役を見事にまっとうした。 心に期するものがあった。昨秋は投手陣の柱として期待されながら、けがで中国大会は登板なし。「仲間が連れていってくれた」春のセンバツの舞台で恩返しを誓っていた。だが新型コロナ禍でセンバツ中止。エースとして臨んだ県独自大会の決勝では制球が乱れて結果を残せなかった。 最初で最後の甲子園となる交流試合に向け、「走者を出しても最少失点で抑える」と自分に言い聞かせながら練習に励んだ。この日は140キロ前後の直球に加え、安保龍人捕手(3年)の好リードで三回からはカーブも決まり始め、相手打線に的を絞らせなかった。 試合開始当初は緊張していたという大舞台のマウンド。チームのサヨナラ負けは悔しいが、それでも「最後は楽しめた」。確かな足跡を残し、夢にまで見た聖地を去った。 ……………………………………………………………………………………………………… 鳥取城北 100000040=5 010010022=6 明徳義塾