【毎日書評】子どもに『なんとかなる力』が身につく「アタッチメント理論」とは?
くっつくこと、離れること
「くっつくこと」は甘えではなく、むしろ反対に、自立した心の成長を支えるものなのだと著者は述べています。それは大人にもあるものだとも。 私たちは、いつでもくっつけるという確信があるとき、離れることができます。反対に、もうくっつけないかもしれないと思うと、離れがたくなります。 逆説的に聞こえるかもしれませんが、くっつくことを考えることは、離れることを考えることになります。(40~41ページより) これはアタッチメント理論の中核であり、おもしろさ。人と人との信頼に満ちた情緒的関係は、まずはくっつくことを思い浮かべさせるからです。 ただしそれは同時に、「“いつでもくっつける関係”が自分にはある」という心の安心の感覚、安全の感覚が、しばしその関係から離れることを可能にするということでもあります。つまりはそれが、自立的に活動する人間の成長を支えるものになるということ。 そのため著者は、“子どもたちが信頼できる人との関係のなかに安心、安全を感じることによって、自分の足で自分の道を歩む姿”をイメージしてほしいのだといいます。 子どもにとって、手を引いてくれたり、背中を押してくれる人の存在はありがたいものであるはず。しかしアタッチメント理論においては、そんなふうに他律的に歩く人間の姿ではなく、自立的に自分の足で歩く人間の姿を考えるのです。 自立的に歩くとは、ひとりで歩くということではありません。誰かとつながっているから、必要なときにその人とのつながりをいつでも感じることができるからこそ、ひとりで歩くことができるのです。そうして歩きながら、新しい出会いを得て、新しいつながりをつくっていくわけです。すなわちこれが、アタッチメント理論の考え方。(40ページより) 特筆すべきは、専門家としてだけではなく、同じ母親としての視点から著者が子どものこころと向き合っている点。だからこそ著者は、ところどころで共感しながら読み進めることができるのではないかと思います。 >>Kindle unlimited、2カ月無料読み放題キャンペーン中! 「毎日書評」をもっと読む>> 「毎日書評」をVoicyで聞く>> Source: 光文社新書
印南敦史