ロバート山本、ボクシングで「人生観が変わった」 井上尚弥戦のリングに“登場”したワケ
今後もインスペクターは継続「ボクシング界を支えていければ」
――現在ではインスペクター(試合進行)として、かなりのハイペースでリングに立たれているとのことですね。 「選手時代は、インスペクターという仕事をあまり理解していませんでした。日本ボクシングコミッション(JBC)のボクサーライセンスも持っていたし、トレーナーライセンスも取りました。ある日、JBCの方に『こんなに後楽園ホールに観に来てるんだったら、手伝ってくれよ』と言われたんです。最初は断っていたのですが、『人が足りない』と何度も誘われたので、研修から始めて、インスペクターのライセンスを取得しました。実際、本当に人が足りないんです。やっていることは相当ハードで能力も必要なのに、報酬は少なく、ボランティアに近い形になってしまうので、続かない人が多いんです。 レフェリーの勉強もしていましたが、『インスペクターが1番仕事が多い』と感じました。会場や控室、医務室のスタンバイ、選手の計量やバンテージチェック、試合中はリング上やセコンドのチェック、試合後は、選手の身の安全を確保します。ボクシングは危険なスポーツなので、安全を最優先しないといけません。誰よりも早く会場入りし、選手の無事を確認して、1番最後に鍵を閉めて出る。それを全部、当時のインスペクターの方にやっていただいていたのに、自分が選手時代はその存在を意識していなかったことを申し訳なく思います。 僕は、このスポーツを経験して人生観が変わりました。これからもボクシングというスポーツが続いて、同じように行き詰まった人を救ってほしい。そのためにも、とにかく選手の安全を確保して、しっかり管理すれば限りなく危険は減らせるんだと広めていきたい。そうやって未来に向けて考えた時、『インスペクターをやるべきだ』と感じて、今も月に10日近く会場に立たせてもらっています」 ――5月6日に行われた、井上尚弥選手とルイス・ネリ選手の一戦で大きく注目されていましたね。 「もう公式戦100試合以上は担当していましたが、あれだけ注目された試合だったので、気付かれてしまいました。もう気付かれないものだと思ってやっていましたから(笑)。初めて観た人は“芸人・山本博”がリングに立っているなんて、『何やってんだよ!』となってしまうことは、重々承知していますが、それはJBC側で決められたことで、僕は真面目に仕事を全うしました。もちろん話題性を求めて、あの試合を希望なんかできるわけありませんし、僕もするつもりないですよ(笑)。JBCにこれまでの評価をいただいて、決定されたんでしょうね。僕はどの試合を担当しても、同じ思いでやります」 ――強い使命感を持って会場に立っていることが伝わってきます。今後もインスペクターを続けていきたいとお考えですか。 「今はそう思っていますね。最近、インスペクターの存在も知られてきて、少しずつ後輩も増えてきました。僕と同じような気持ちで頑張っている仲間とボクシング界を支えていければと思います。でも、まだまだ根性ある人は募集してますので(笑)」
中村彰洋