【心つなごう/能登地震】同じ目線で寄り添う 震災経験、福島県警の松崎悠花さん 避難者の悩み聴く
元日に最大震度7を観測した能登半島地震は、2月1日で発生から1カ月。福島民報社は、30日現在で1万4512人が避難を続けている石川県に記者を派遣した。福島県からの支援の動きや被災地の状況、困難に立ち向かう人々の姿を伝える。(報道部・小山大介、白河支社・水口薫) 最大震度6強を観測した能登半島中央部の穴水町では936人が公共施設などに身を寄せる。福島県警が派遣した特別生活安全部隊は30日までの8日間、避難所を巡り相談対応や防犯指導に当たってきた。「被災者と同じ目線に立ち、寄り添うことはできた」。県警本部生活安全企画課の松崎悠花(ゆうか)さん(28)は活動を振り返る。 隊長の神野英之さん(44)ら9人は30日、町内で2番目に多い約120人が身を寄せる施設「さわやか交流館プルート」で活動した。物資不足や不在にした自宅への空き巣の不安、先行きの心配に耳を傾けた。 松崎さんは幼子を連れて避難所で休んでいた女性の元に向かった。「何か困りごとはないですか」。声をかけたのは町内の自宅が被災し、身を寄せる菅谷愛実(まなみ)さん(36)だ。地震後は夫の広幸さん(40)と生後9カ月の長女優愛(ゆあ)ちゃんと町内の親戚方で数日過ごし、5日にこの避難所に来たという。
「私と話すことで少しでも気を楽にしてほしい」。腰を下ろし、視線を合わせて相手の話にうなずいた。着替えなど子ども向け物資が足りないこと、復旧が進まない先行きへの不安…。打ち明けられる一言一言を全身で受け止めた。悩みの中には女性ならではの事柄もあり、切実さに胸が痛んだ。傍らの優愛ちゃんをあやすうちに、2人に笑顔が戻った。菅谷さんからは「話を聞いてもらい、少し気が晴れた」と感謝の言葉をもらえた。 松崎さんは中学3年生の時、福島市で東日本大震災を経験した。卒業式を終えて友人と出かけようとした矢先だった。避難はしなかったが、入学する高校は避難所に。手続きで高校に行った際には物資の運搬を手伝った。視線の先に避難所で活動する警察官がいた。「話してはいないが、制服姿が心強かった」。復興へ歩む県民を守りたい―。神奈川県内の大学を卒業して県警察官となった。 松崎さんは今回が初の被災地派遣だ。最初は「緊張で硬くなった」が、上司の助けもあって任務をまっとうできた。「由緒ある穴水町が一日も早く復興できるように。自分もできる限りの支援をしたい」と思いを寄せた。