新NISAブームに踊らされた高齢者の末路、「投資ゼロ」で資産を増やす「目から鱗」の方法とは?
定年後を見据えた老後資金、どうしていますか?すでに投資を始めている人、投資は不安で二の足を踏んでいるという人もいるでしょう。投資にはリスクがつきものです。ファイナンシャルプランナーの長尾義弘さんは、投資などしなくても、公的制度を賢く利用して「減らない財布」を手に入れることで、豊かな老後生活が送れるといいます。長尾さんの著書『投資ゼロで老後資金をつくる』(青春出版社)から、安心の老後を無理なく築くためのシミュレーションを、一部ご紹介します。 ● 老後資金は「運用しないと損をする!」という誤解 2024年から新NISAが始まり、関連本が続々と出版されるなどマスコミでも多く取り上げられました。まさに「新NISA」の一大ブームになったのです。 定年後の老後資金も、新NISAを使って運用する方法がいくつも紹介されています。 たしかに、定年前(年金暮らしになる前)の資金形成の時期には、iDeCoや新NISAを使ってお金を増やすことはとても大事です。 しかし、60歳以降の資産取り崩しのステージでは、必ずしも有効な手段ではなくなります。 新NISAを使って、運用がうまくいけば資産寿命は延びますが、少しだけです。長寿時代においては、まったく足りません。 「運用すれば、お金は増える。資金寿命もうんと延びるでしょう?」 そう考える人も多いと思います。 はたして、どれほど資金寿命が延びるのか。
運用しない場合と新NISAで運用した場合を、具体的な例で比較してみましょう。夫婦世帯と単身世帯の2つでシミュレーションをしてみます。 ● 60歳夫婦世帯:何もしない場合 (前提条件) 60歳の同い年の夫婦。妻は専業主婦。夫婦とも100歳まで生きるとシミュレーション 老後資金1500万円(退職金を含む) 〈収入〉 ◎労働収入 夫:60歳で定年退職 → 60~64歳は再雇用で年収380万円 65~69歳は年収120万円で働く ◎年金(65歳からの受給額) 夫:年額200万円 妻:年額80万円 計280万円 〈支出〉 ◎生活費 月額約32万円(年額380万円) ※これが生涯続くとする では、この夫婦の老後の暮らしを考えてみましょう。 老後資金は預貯金のままで運用をしません。年金は65歳から受け取ります。 60歳から64歳までは給与が生活費に充てられるため、老後資金の取り崩しはありません。 65歳から年金の受給が始まります。夫200万円、妻80万円で、合計280万円です。69歳までは給与が120万円ありますから、年に20万円の黒字が出ます。毎年20万円、貯蓄(老後資金)が増えます。 しかし、仕事を辞めた70歳以降は、収入が年金だけになります。年間100万円の赤字になり、その分は老後資金から取り崩します。