<カープ若手育成論>「プロ野球選手である前に一人の社会人として」若鯉を見守るレジェンド捕手、大野寮・道原裕幸寮長
ドラフトでカープに指名された選手たちが、まず入寮するのが二軍選手たちが生活する「大野寮」だ。現役時代は捕手として黄金時代のカープを支え、長年大野寮で寮長を務める道原氏に指導論を聞いた。(全2回・第1回) 【写真】2022年からメジャーリーグ・カブスでプレーしている鈴木誠也 ◆一人の社会人として、当たり前の行動ができる指導 寮長という仕事は、三篠寮(かつて広島市内にあった選手寮)時代に一軍コーチを務めながら、兼任で寮長を務めていた時代からになります。二軍の大野寮の寮長は2011年から正式に務めています。寮長としての主な仕事ですが、新人選手が入団してきたら、プロ野球はどのような世界なのかということ、そして社会人としてきっちりとした行動をしてもらうこと、を中心に指導をしています。 二軍は高卒選手が多い場所です。皆練習をすることは当たり前ですが、同時に『プロ野球選手である前に一人の社会人』として、きっちりとした行動を取れる人間になってもらうことも意識して教育しています。 私の普段の動きですが、二軍の試合日は全員朝6時から朝食になるので、食事時間に遅れていないか確認をします。また夜は門限(22時30分)を守っているか?など、まずは『時間を守って生活しているか?』という部分を管理しています。これらを踏まえて考えると、私が寮長として大事にしていることは『時間と挨拶』。この2つですね。 プロ野球選手として活躍するには一軍にいなければなりません。二軍の選手たちには「ここにずっといてはダメだ。早くここを出ていけよ」と日頃から言うようにしています。『出ていけ』というのは活躍してほしいという愛情の裏返しですからね(笑)。 大野寮の横には室内練習場が併設されています。『しっかりここを利用しなさい』ということも選手たちに言っています。門限までは自由に利用可能です。これまで多くの選手を見てきた中で、練習に関して特に印象的なのが鈴木誠也(現カブス)です。彼は室内練習場でずっとバットを振り、門限を過ぎても寮の入り口のわずかな灯りの下でバットスイングを続けていました。門限を過ぎていても、練習をしているわけですから私としても門限を過ぎているとは言えません。「最後は鍵をしめて寝るんだぞ」と声をかけるくらいでした。寮生活でも常にバットを持ってウロウロしていたイメージが残っています。3年間くらい寮生活をしていたと記憶していますが、すさまじい練習量だったことが忘れられません。 (後編へ続く)
広島アスリートマガジン編集部