ガザ問題で強硬姿勢! 「イスラエル企業」と近くなりすぎると、日本の評判はイスラム諸国で失墜する
中東情勢悪化
2023年10月上旬以降、イスラエルとパレスチナ自治区・ガザ地区を実効支配するイスラム主義組織ハマスとの戦闘が激化している。しかし、両者の軍事力の差は歴然としており、イスラエルはガザ地区への容赦のない空爆や地上侵攻を続け、パレスチナ側の犠牲者は3万人を超え、諸外国のイスラエルへの批判が強まっている。 【画像】えっ…! これが自衛官の「年収」です(計9枚) そして、攻撃の手を緩めないイスラエルのネタニヤフ政権に対し、これまでイスラエル支持に撤してきた米国のバイデン政権も不満を募らせて、両者の間でも溝が深まっている。バイデン政権としては、イスラエル支持に撤すれば諸外国から対米不信が広がるとの懸念がある。ネタニヤフ政権としては、秋の大統領選挙で 「親イスラエル、反イラン」 のトランプ氏が勝利することを強く望んでいることだろう。 一方、中東を巡る軍事的緊張はビジネスの世界にも大きな影響が出ている。ガザ地区で犠牲者の数が増えるにつれ、ヨルダンやクウェートエジプトやモロッコ、クウェートやヨルダンなど中東や北アフリカの国々を中心にイスラエルへの非難の声が強まり、若者たちが街頭に出てイスラエルへの抗議デモをあちらこちらで行った。ネットやSNS上では 「ジェノサイドを続けるイスラエルの製品を購入するな」 「イスラエル製品の輸入を停止しろ」 などイスラエル製品のボイコットを呼び掛ける動きが広がった。実際、各国にあるスーパーマーケットや露店の店頭からイスラエル製品がなくなるケースが見られる。 影響はイスラエルだけではない。イスラエル支持に撤する米国への不満も広がり、日本企業の進出の多いインドネシアやマレーシアでは、イスラエルだけでなく同国支持に撤する米国への非難も強まり、両国にあるマクドナルドやスターバックスでは紛争以降客足が減り、売り上げが大きなマイナスになっている。
伊藤忠アビエーションの決断
そして、影響は日本企業にも及んでいる。 伊藤忠商事の子会社である伊藤忠アビエーションは2024年2月、イスラエルの軍事企業エルビット・システムズと締結している協力関係を2月末までに終了すると発表した。 伊藤忠アビエーションは防衛装備品の供給などを担ってきたが、今回は防衛省からの依頼に基づき、自衛隊が使用する防衛装備品を輸入するためエルビット・システムズと協力関係の覚書を2023年3月に交わしたが、突然の終了となった。 今回の終了について、オランダ・ハーグにある国際司法裁判所が2024年1月、イスラエルに対してジェノサイドを防止するためあらゆる措置を取るよう命じたことを踏まえ決定したと同社は説明し、エルビット・システムズ社との提携関係は今回の紛争に一切関与するものではないと強調した。 伊藤忠アビエーションの今回の判断は、人道や人権的側面から考えても賢明な判断だった。近年、バイデン政権が中国・新疆ウイグル自治区における人権状況を問題視し、同自治区での強制労働が関わるあらゆる製品の対米輸出に制限を加えたように、各企業には高い 「人権デューデリジェンス(企業がビジネスパートナーを含むサプライチェーンにおける人権侵害をチェックし、その防止・改善に努めること)」 が求められている。 イスラエルへの国際的な非難が強まり、それが経済の領域にも影響が及ぶなか、その状況でイスラエル企業とビジネスを継続すれば返って伊藤忠アビエーションの企業価値やブランドが損なわれるリスクがあり、同社はそれを回避するため今回の判断に至ったことが考えられよう。