貴重な郷土誌伝えたい 録音図書 声の輪「伊那」読み続け【長野県】
視覚障害のある人などに向け「録音図書」を製作しているボランティア団体「朗読奉仕の会 声の輪」は、長野県飯田下伊那地域の郷土誌「伊那」の録音図書を20年間にわたり作り続けている。 飯田市立図書館で活動するボランティアグループの一つで、1982年に発足。現在は47人が所属している。同図書館は視覚に障害のある人などを対象に録音図書を貸し出しており、声の輪は書籍などを音訳した「声の本」を無償で作っている。 パソコンや専用機器で録音し、年間約100タイトルを製作。累計で約3500作品を提供している。現在はCDの製作と、インターネット図書館「サピエ図書館」にもデイジー図書としてデータを提供しており、全国から利用がある。 録音するものは本をはじめ新聞、雑誌など多様で、読む人以外に3人が校正し、1冊が出来上がるまで数カ月かかる。 「伊那」の録音図書の製作は2004年、利用者からのリクエストで始まった。一時期製作が途切れたが、15年に坂谷内成子さん(74)を中心に再開。現在は14人が担当し、1冊50ページを5人ほどで読んでいる。月初めに冊子が届くと手分けして3週間ほどで完成させている。 文章をはじめ、古文書など記載の資料を全て読む。「地元のことなので人名や地名などを正確に伝えたい」と言葉を丁寧に調べながら進めている。坂谷内さんは「インターネットには載っていないことが多く、古文なども理解しなければならないので難しい」と苦労を語る。調査票をつくり、図書館職員に調べてもらったり、時には自ら専門家や地元の人に聞いたりして、正確な音訳に努めている。 坂谷内さんは「利用者から連絡を受けることで、確実に聞いてくれているのが分かり、より良いものをつくりたいと思う」とし、「知らないことばかりで、読むといかに飯田の文化が高く広いかが分かる」と語った。 玉置すみ子会長(74)は「伊那は地元の貴重な資料。たくさんの方に知っていただきたいと思う。会員も一生懸命取り組んでいるので、ぜひ聞いてもらえるとうれしい」と呼び掛けている。 伊那の録音図書は飯田市立図書館に登録されており、一時的に読書が困難な人も利用できる。問い合わせは同館(電話0265・22・0706)へ。