業歴100年以上の「老舗企業」、日本に4万5284社 安定した財務のカギは「営業外収益」にあり
業種別、社数では建設・小売業、出現率では醸造系の業種が上位
業種別でみると、老舗企業数は貸事務所業がトップだった。1216社を数えたが、このうち半数超の企業は従業や過去の主業として別の事業があり、本来の主業があるなかでもテナント収入など不動産収入が売上高のメインとなっていた。その他、建設業や小売業が上位にランクインした。 業種別に老舗企業の割合(出現率)をみると、規制によって新規参入が制限されている清酒製造業は80.5%と多くを占めた。その他にも、煙火(花火)、砂糖、食酢など昔ながらの業種に加えて、醸造系の業種が上位に並んだ。また、近年は毎年多くの金融機関が創業・設立から100周年を迎えており、老舗企業の割合が高くなっている。
老舗企業は「営業外収益」に支えられ、高い「売上高経常利益率」が強み
長い業歴を誇る老舗企業は安泰のイメージを持たれることから、財務基盤も盤石という見られ方をされることも多い。そこで、2023年度決算における全業種(約30万社)と老舗企業(約1万社)それぞれで、財務比率指標の平均を比較した。 なかでも「収益性」の観点に注目したい。売上高における営業利益率と経常利益率をみると、いずれも全業種平均より老舗企業の方が高く、特に経常利益率で大きく差が開いている。老舗企業は長年有する土地・建物などの不動産や株式などの金融資産を多く持ち、本業以外の稼ぎ(営業外収益)が多いことが背景にあるとみられる。実際に、営業外収益率は老舗企業の方が高い数値を示している。
倒産相次ぐ「ニッポンの老舗」、今後は「本業の質」に厳しい見方が強まるか
世界で業歴100年を上回る企業のうち半数以上を日本が占めているとの調査結果もあるなど、国内約4万5000社を数える「ニッポンの老舗」は、世界に誇る日本の魅力として語られることが多い。実際に、清酒製造など醸造系や呉服関連を代表とした日本の伝統文化を彩る産業が、数多く老舗として今なお事業を継続している。 財務指標分析では老舗企業特有の結果がみられ、長年にわたって蓄積された資産による財務の収益性・安定性が老舗企業の強みとして確認された。しかし、2024年9月時点における老舗企業の倒産は110件を数え、既に過去10年間でも最も多かった2019年に並び高水準で推移している。そのうち、相次ぐ値上げの波に追いつけなかった物価高倒産(22件)や後継者不在による倒産(16件)、金融機関から返済条件の変更(リスケジュール)を受けながらも経営改善が図れなかった返済猶予後倒産(16件)など、近年高まっている倒産要因も多く含まれていることがわかる。さらに円安、コンプライアンス違反、公租公課滞納などを要因とする倒産も複数確認された。 こうした状況を踏まえて、金融機関からは「老舗だから大丈夫だろうというイメージに捉われることなく、これまで以上に本業の事業性評価を細かくチェックする必要がある」といった声も聞かれ、今後は老舗企業に対して厳しい見方が強まるとみられる。老舗企業には一定のブランド力が見られるものの、固定観念に捉われない攻めの経営が一層求められるだろう。