老舗酒蔵の国産ウイスキー市場参入続々 海外ブーム背景に良質な水と発酵技術で勝負
国産ウイスキーは近年人気が高まっている。国税庁の統計によると、ウイスキーの課税出荷数量は平成20年ごろから増加傾向が続き、令和4年度には15万4千キロリットルと10年前の約2倍に。財務省貿易統計によると輸出額でも平成30年から令和4年までの5年間で約4倍に達し、2年度には清酒を抜いて全酒類で1位になった。
日本洋酒酒造組合などによると、ソーダで割ったハイボールを提供する飲食店が増えたことや、ニッカウヰスキー創業者をモデルとしたNHK朝の連続ドラマの放送などで国内消費は増加。世界的なコンペティションで国産ウイスキーが相次ぎ入賞するなど海外での評価が高まったことも要因という。
一方で、有名銘柄の長期熟成品は品薄状態が続き、一部では定価の数十倍の値段で転売される事態も起きている。
■日本のモノづくりの精神を
こうした背景から、ウイスキー製造に参入する事業者は近年増加傾向にある。国税庁の集計によると、製造者数は平成25年度45事業者だったのが、令和4年度は142事業者まで増えた。
ウイスキー評論家でウイスキー文化研究所の土屋守代表は「ウイスキーの消費拡大を受け日本酒や焼酎メーカーが生き残り戦略として参入するケースが多い」と話す。ただ「ウイスキーは熟成を経てどのような味わいになるか調整が難しく、販売まで長い期間を要するため資本力も必要。専門的な知識や高い技術が求められるため、今後淘汰(とうた)が進むのではないか」とみる。
一方で「四季があり地域によって変化に富む気候や良質な水など、日本はウイスキー造りに最適な場所で、世界中から注目されている。日本のモノづくりの精神を生かし、新しい蒸留所ならではのこだわりと個性が詰まった商品を造って世界に発信してほしい」と期待を込めた。(前川康二)