福島原発の廃炉「2051年完了」は無理。宮野廣・原子力学会廃炉委委員長が現実的な展望の必要性を指摘
――福島第一原発では2023年10月以降、放射性物質の飛散や建屋外への漏洩、作業員の熱傷など重大なトラブルが4件も起きています。今回の接続順番間違えの確認不備との間に共通の要因はありますか。 起きている問題はそれぞれ異なるが、作業を進めるための手順書の確認が不十分だったのではないか。元請け企業が作った手順書の内容を確かめ、きちんとその通りに作業が実施されているかを管理することが東電の役目だ。東電の担当者がいちいち現場に出向く必要はないが、きちんと押さえておくべき管理上のポイントがある。トラブルが続くと、社会の信頼を失いかねない。
――9月17日には、取り出し装置の先端部分に装着されていたカメラなど、4つのカメラのうち2つが映らなくなりました。東電は取り出し装置を格納容器内から引き揚げ、原因を究明することになり、試験的取り出し自体が振り出しに戻った形です。 カメラ自体の問題なのか、あるいは途中のケーブルに何か問題があるのか、原因を特定する必要がある。ただ、燃料デブリをつかみ取る前の段階だったので、装置自体の汚染度合いは比較的低いと見られる。いい経験だと前向きにとらえ、問題点を把握したうえで、今後の作業に役立ててほしい。
――東電が燃料デブリ取り出しなどの廃炉作業を進めるに当たって依拠しているのが、政府が定めた「中長期ロードマップ」です。それに基づき、試験的取り出し着手をもって、「第3期」という本格的な廃炉作業に移行しました。政府の原子力損害賠償・廃炉等支援機構(以下、原賠機構)は、取り出し方法の案を提示するとともに、今後1~2年かけて東電が本格的な取り出しに向けて具体的な設計方針を示すように求めています。 燃料デブリの取り出しについては、溶け落ちて原子炉格納容器の底に貯まっているものを取り出すことが最終的なゴールになる。しかしその前に、格納容器の内部にあり、燃料集合体が収納されていた原子炉圧力容器の中に残っているものを取り出す必要がある。これらのほかに、高温になって飛び散り、格納容器の壁に付着しているものも回収の対象だ。