「職場いじめからゴミ屋敷化」住人の悲しすぎるSOS ふすまに書かれた無数の「たすけて」の文字に込められた想い
かといってふすまを処分して、なかったことにするのも違う。多くのケースを見てきたイーブイなりの気遣いだった。また、依頼主である両親に対して気を遣ったのにはこんな理由もあった。 「依頼時のお話と部屋の状況を比べると、その温度感がだいぶ違ったんです。お母さんは『娘がちょっと精神的にしんどかったみたいで』とお話されていました。でも、部屋を見るとちょっとどころではなかったわけです。娘さんのつらさが仮に“10”だとしたら、ご両親はその3割も気づけていなかったはずです」
親としては娘のつらい状況を何も把握できていなかったことになる。第三者にふすまの文字を見せられてしまったら、親としての立場がなくなってしまう。 きっとこの部屋に住んでいた娘の女性は、几帳面で責任感の強い人だったのだと思う。それゆえに職場で起きたいじめのことも周りに相談できず、心が壊れるまで我慢してしまい、親には心配をかけてはいけないと一人で悩みを抱えてしまったのだろう。 部屋の状態はそこに住む人の心の状態が反映される。
カロリーメイトの空箱をひたすらガムテープでぐるぐる巻き続け、ダンボールへ大量に溜めておくなんて普通の精神状態ではない。生ゴミを溜めてしまうようなことはなく異臭もしなかったが、トイレだけは動画には映せないほどに汚れていたという。 「私も部屋の状況から住人の女性は几帳面な方なんだと予想ができました。でも、これ(ガムテープで巻かれたカロリーメイトの空箱のこと)ばっかりは几帳面とかそういう問題ではないですよね。動機がわからないですし、精神的な問題が起因しているんだと思います」
■部屋からは娘の強い強迫観念を感じた 動機のわからない偏執的なこだわりは、過去にとりあげたゴミ屋敷でもいくつか見られた。 たとえば、「『10年没交渉の弟が急死』姉が見たゴミ屋敷の全貌」で亡くなった男性が住んでいた部屋には、洗剤で綺麗に洗われた食品や弁当のトレーが入った小さいゴミ袋が、壁や天井の至るところに吊るされたビニール紐に大量に括りつけられていた。 男性は亡くなる直前までおそらく引きこもり状態にあったという。依頼主である姉は、「弟は几帳面な性格でした」と話していた。