【コラム】長引くウクライナ戦争…外交に善意は存在するか(1)
ウクライナ戦争がもう3度目の冬を迎えている。戦争が3年目に入って半年が経過したが、依然として終戦の兆しは見られない。欧州では戦争の出口を探ると同時に、戦争に入った時期の復碁も行われている。なぜ欧州はこの戦争を防げなかったのか。 「見えない者たち」。フランスとドイツはロシアの意図と膨張を正しく見ることができなかった。フランス日刊紙ルモンドのコラムニスト、シルヴィ・カウフマン氏の著書『見えない者たち(Les Aveugles)』(写真)は、フランスのマクロン大統領とドイツのメルケル首相がロシアのウクライナ侵攻を防げず、むしろ道を開いたと主張し、ウクライナ戦争への過程を復碁している。診断は冷厳だ。対話と経済的相互依存が平和を担保するという原則は作動しなかった。警告は何度も無視された。最悪の状況はそのたびに大股で近づいた。 ◆「ロシアに屈辱感を与えない」 2014年のロシアによるクリミア半島合併以降、欧州の地政学はすでに冷戦構図に進行していた。ロシアに対する一連の制裁措置が実施された。しかし対話を中心にした関係の設定は続いた。欧州大陸で実質的なリーダーシップを発揮していたフランスとドイツがこうした試みに積極的だった。半面、エストニア・ラトビア・リトアニアのバルト3国とポーランドを含む東欧州国家はロシアの膨張の意図に対して持続的に警告音を鳴らした。 すべてのフランスの大統領は新しい欧州の安保構図構築を望んだ。巨大な構想を重視したフランスの特性でもあった。特にロシアとの緊密な関係設定は歴史的に欧州の念願だった。「ロシアに屈辱感を与えない」というのはフランスの外交的伝統でもあった。 2017年の任期初期のマクロン大統領はロシアのプーチン大統領をベルサイユ宮殿に招待した。欧州外交の核心であることを浮き彫りにする若くて覇気ある新大統領はロシアを欧州に縛っておくことができると信じて、欧州とロシアの間の安保と信頼に基盤を置いた新しい秩序を構築することを望んだ。 2019年8月のG7(主要7カ国)サミットを数日後に控え、マクロン大統領は南フランスの美しいコートダジュールにあるブレガンソン要塞にプーチン大統領をまた招待した。また同年10月には仏パリで、いわゆる「ノルマンディ方式」と呼ばれるフランス・ドイツ・ロシア・ウクライナの2プラス2首脳会談が開かれた。ロシアの善意を確認しようという試みは、プーチン大統領とウクライナのゼレンスキー新大統領の間隙を確認しながら次の会談を約束した。 この過程を東欧国家は疑問を抱きながら見守っていた。果たして欧州連合(EU)を率いるフランス・ドイツ両国の安保利益が自国の利益と合うのか、依然として不安感を払拭できなかった。ロシアはすでに内部的に抑圧的、膨張的で現状打破的な傾向が歴然だった。 ◆対話と経済に対する信頼 ドイツは対話と経済的なつながりで十分にロシアを牽制できると自信を抱いていた。経済的な相互依存は政治的な相互依存に結びつくと期待した。「貿易を通した変化」(Wandel durch Handel)はドイツ外交の伝統であり東方政策の根幹でもあった。 クリミア半島合併以降に萎縮したが、ドイツとロシアの経済・技術連係は長い根を持っていた。2011年に完工したノードストリーム1天然ガスパイプラインはロシアとドイツのエネルギー貿易を直接的に結びつけ、続いて建設されたノードストリーム2パイプラインも開通を控えていた。これはメルケル首相が重視する事業でもあった。 ロシアは欧州市場と緊密につながっていた。東欧に対する深い理解と4度の首相在任中にプーチン大統領と結んだ個人的なネットワークも、メルケル首相に対話に対する確信を与えた。2021年6月に英国カービスベイで開催されたG7サミットで、メルケル首相は「冷戦時代と同じくモスクワとの関係は続けるべき」と主張した。 フランスとドイツは2021年6月24、25日の欧州首脳会議でプーチン大統領との首脳会議を提案する計画を立てた。任期末を迎えながら最後の欧州首脳会議となるメルケル首相が先に提案した。「ロシアは私たちを敵と見ている。私は幻想はない。しかし私たちはプーチン大統領と対話をしなければいけない。私たちは脅威の対象になっているが、対話の枠を活用できずにいる」。マクロン大統領が続いた。「直接的な当事者である我々は米国・ロシアの対話を受動的に眺めていることはできない」。