このままでは月が「中国の領土」になってしまう…!いま習近平の宇宙開発「世界初連発」のウラで高まっている「アメリカの懸念」
「カネは出さずに口は出す」
中国政府は不況の元凶である不動産分野に有効な対策を講じてこなかったが、ここに来て「ようやく本格的なてこ入れを実施する」との期待が高まっている。 各種報道によれば、地方政府系企業が国有銀行の融資を利用して経営難の不動産企業から大幅な値引き価格で売れ残り住宅を購入し、その後、国民に手頃な価格で住宅を売却するというスキームだ。だが、実効性は乏しいと言わざるを得ない。 これを実現するためには約40兆円の資金が必要だと言われているが、地方政府系企業や国有銀行だけでこれを負担できるとは到底思えない。 地方政府に頼れない状況下で財政資金を投入できるのは中央政府しかないが、中央政府は「口は出すが、カネは出さない」というこれまでの姿勢を改めようとしていない。 このままでは中国の不動産市場はいつまで経っても回復しないのではないだろうか。
急増する中国人移民
不景気の悪影響を最も被っているのは若者や高齢者だ。 「来年卒業予定の日本の就職内定率が5月1日時点で72.4%となっている(リクルート調べ)」とのニュースに、中国のSNSでは「うそでしょ!?」との声が一斉に上がっている(5月15日付RecordChina)。 全国を巡って就職活動を行っている若者たちは、一泊数百円のホステルで旅費を節約している。ホステルには同じ悩みを抱える若者が集い、癒やしの場になっているという(5月1日付クーリエ・ジャポン)。 中国の高度成長を支えた農民工(故郷の農村を離れて都市部で働く出稼ぎ労働者)は老後を迎えつつあるが、年金制度が整備されていないため、死ぬまで働かなければならない「厳しい現実」が待ち受けている(5月12日付ロイター)。 生活難を理由にメキシコ経由で米国に不法移民しようとする中国人が急増しているが、新たにキューバ経由のルートも確立されつつある(5月8日付RecordChina)。
宇宙開発のウラにある国民の窮乏
このように国民が窮乏化しつつあるなかでの、宇宙開発計画は大国としてのプライドの維持を優先する姿勢にも映るのである。 そのため頼みの綱である輸出を巡る環境が急速に悪化しているのだ。特に過敏な反応を見せているのが、アメリカであることは言うまでもない。 5月14日、米政府は中国製電気自動車(EV)に現状の4倍に当たる100%の制裁関税を課すことを決定した。 さらに月面探査を主導するようになった中国に対しては、「月」が中国の領土になってしまうのではないかという警戒感も出ている。 後編「習近平「初もの尽くしの月面探査」に国民が大反発…! NASA長官も「釘を刺した」中国宇宙開発の「呆れた実体」」では、いよいよ不穏な空気を増していく米中関係と、両国の宇宙開発をめぐる軋轢をさらに詳しく見ていこう。
藤 和彦(経済産業研究所コンサルティングフェロー)