『ガンダム』可変モビルスーツが廃れたワケ 連邦が低コスト機に舵を切った要因は?
可変機はプラモデル化に時間がかかる?
地球連邦軍は、変形機構を簡略化した「ゼータプラス」を開発するなど可変機の有効性は認めており、『機動戦士ガンダムUC』にはメタス系列の可変機構の流れをくむ「リゼル」が登場しています。リゼルは部品規格などの一部をジェガン系列と統一し、可変機が抱えていた生産性と整備性の悪さをクリアしていました。Zガンダム系列の機体は非常に操縦が難しいことで知られていましたが、リミッターを設けることにより新兵でも扱え、リミッター解除により熟練兵が満足できる性能を発揮できるようにされているなど、可変機として完成の域に到達しています。 ただし、リゼルは地球連邦軍主導の開発ではなく、「アナハイム・エレクトロニクス」が「エゥーゴ」と立ち上げたMS開発プロジェクト「Z計画」側からの売り込みであり、以降、新型機が開発された形跡は今のところありません。 そもそもこの時代になると、宇宙世紀の大きな動乱において、地球連邦軍に敵対する勢力はテロリストに限定される状況となっているため、量産型MSとエース用MSの更新を行ない、移動距離に関してはサブフライトシステム(いわゆる「ゲタ」)を利用すれば十分です。わざわざ維持管理の難しい可変機を量産する必要性も無くなっています。 もっとうがったことを言ってしまえば、可変機はプラモデルの設計に手間がかかるという問題もあります。現代の開発技術であればある程度の見込みを立てて動くことも出来るでしょうが、1980年代半ばに可変機を何年も続けて出し続けるのは難しかったのではないでしょうか。当時発売された、可変機構を再現したキット「1/100 Zガンダム」を世に送り出した関係者の苦闘がしのばれます。 とはいえ可変機にはどこか心をくすぐる浪漫があります。いつかまた、新たな可変機が登場してくれることを願ってやみません、
早川清一朗