堂本剛「環境が変わっていくだけで僕は僕」 新しいフィールドでの出逢いと揺るぎないもの
堂本剛「日本のファンクミュージックを盛り上げていきたい」
ーー今年2月には初の主催フェス(『ENDRECHERI MIX AND YOU FES』)も開催されました。 堂本:そもそも日本はファンクのフェスがあまりないんですよね。海外のファンクミュージシャンが来日しても、ファンクに特化したフェスがないからジャズのフェスに出演するようなことが多くて。ジャズとファンクは親和性があるから違和感はないけど、例えばジョージ・クリントンが来日したとして彼は“ファンクの帝王”ですから、やっぱりファンクのイベントに出てほしい。しかも、音楽業界にはファンク好きがたくさんいるんですよね。みんなロックやHIPHOPをやっていてもファンクが好きという人は結構いるんだなとずっと感じていたので、色々な人に熱意をもって「ファンクのフェスをやりたいねんけど」という話をしていたら、皆さんが立ち上がってくれて、フェス開催に至りました。 僕とはちょっと世代が離れたKroiにも出演してもらったんですけど、彼らとは「ファンクがなぜ日本で流行らないのか」という疑問に対して「これからも挑み続けよう」と話が盛り上がったことがあって。若い世代の子たちもファンクがやりたいし、フェスが終わった後も「もう一回やりたいです」って言ってくれて。とにかく楽しかったですね。ファンクのフェスを開催する上で、ステージに立つ人間が楽しんでいることと、オーディエンスが楽しんでいることがすごく大切だと思っていて。めちゃくちゃ有意義な時間を過ごせたと思います。これが2回、3回と続いていくように色々な人たちと話しています。最終的にはジョージ・クリントンも呼びたいですね。やっぱりファンクのイベントでファンクが好きなオーディエンスと一緒に観たいという想いがあります。 ーー今回のツアーは『RE』という名前がつけられています。意味深なタイトルであるように感じますが、どのような意味があるのでしょうか。 堂本:リスタート、リボーン、リセット……色々な変化を意味する言葉だと思うんですよ。だから変化に突入していくというようなイメージで『RE』というタイトルをつけました。僕自身がフィールドを変えたというのもあるし、来ていただいた人もライブを観たことで何かが変わっていくような何かを体感してほしいという想いでこのタイトルをつけました。 ■環境が変わっても揺るぎない“堂本剛”の軸 ーーこれまでのお話にもあった通り、今年3月に所属事務所からの独立を発表をされました。フィールドが変わったことで、どのような変化を感じていますか? 堂本:背景や環境が変わっていくだけで、僕は僕なので、音楽をやる上でのマインドは大きな変化を感じていないです。.ENDRECHERI.の由来となったエンドリケリーというのは古代魚なのですが、エンドリケリーは何億年も前から現在まで体の機能や姿を変えずに現在まで生きているんです。僕もそういう人間になりたいと思っていて、時代に合わせて順応はしながらも、根本的な部分は他者が何を言っても変わらずに、自分が自分を愛することが必要だと考えています。時代や環境が大きく変わる中で、自分も変わらなければならない部分もありますが、自分のビートは変えずに、その周りにある自分の心とは遠いものをエンド(=END/終わり)させて、リ(=RE/再生)していく。そういう変化を繰り返しながら、自分らしくいられることを大切にバランスを取っていけたらいいなと思っています。 具体的な変化と言うと、ライブをひとつやるにしても、僕が実際にやらなければいけない仕事が増えてはいますが、.ENDRECHERI.を立ち上げてから独立するまでも1人でやっていたことは結構多くて。その時に勉強したことが今活きていると感じています。もちろん新しく勉強することも沢山あるけれど、これまでも裏方の仕事はたくさんやってきたし、新しいポジションの仕事も楽しいと感じながらやれています。 ーーそのように環境が変わった今、これから挑戦してみたいことはありますか? 堂本:もともと日本の音楽シーンを相手に音楽を作っているわけではないのもあって、もっと海外へアウトプットしていきたいなと思っています。地球に人が住んでいる場所は日本だけではないですから。世界に対して色々な人たちの音楽を聴いてもらえるようなチャンスの機会を自分に与えてあげられたらいいなと。あと、ジョージ・クリントンに会いたいという目標を神様に叶えさせてもらったので、次は一緒に曲を作るんですが、素直に思うのは、また一緒にセッションがしたいですね。そういうような活動を通じて、とにかく日本のファンクミュージックを盛り上げていきたいです。
佐々木翠