中元日芽香さん、乃木坂46から心理カウンセラーに 適応障害を経て「自分自身が後悔ない選択を」
4月から新年度が始まり、新たなスタートを切ろうと奮闘する人が多い中、「このまま今の仕事を続けていいのか」「これからどうしたらいいのか」ともやもやした気持ちを持つ人もいるかもしれません。アイドルグループ「乃木坂46」元メンバーの中元日芽香さんは、適応障害を経て、現在は心理カウンセラーとして活動中。『なんでも聴くよ。 中元日芽香のお悩みカウンセリングルーム』(文藝春秋)で回答した悩み相談を紐解きつつ、中元さんが全く違うキャリアを歩む決断をした経緯や、これから目指す生き方について聞きました。(文:五月女菜穂 写真:篠塚ようこ) 【写真】中元日芽香さんインタビューカットはこちら
ある日、仕事にいけなくなって
――2017年まで乃木坂46のメンバーとしてアイドル活動をしていた中元さん。そもそもなぜ心理カウンセラーになろうと思ったのですか。 アイドル時代に、適応障害になり休業をしていた時期がありました。当時のマネージャーさんから「プロによる心理カウンセリングを受けてみてはどうか」と提案をしていただいて。実際に心理カウンセラーの方とお話をする中で、心がすごく楽になりました。その経験から、アイドル卒業後のキャリアとして心理カウンセラーを目指してみたいと思い、今に至ります。 ――アイドル時代に休業したときはどんな症状があったのですか。 頑張りすぎてしまっていたり、程よい息抜きや自分で自分を褒めてあげることができなかったりして、自分を追い込んでいました。思えばお腹が痛くなったり、夜眠れなくなったり「ちょっと休んだ方がいいよ」と身体からのSOSは出ていたと思うのですが、まだできると走り続けていました。 決定的な出来事として、ある日、お仕事に行けなくなってしまったんです。遅刻なんて許せないと思っている私がこんなことになるなんて……と自分でも何が起きているか分からなくなってしまって。それでメンタルクリニックにかかった結果、「ちょっとお休みしようか」ということになりました。 ――なかなか弱音を吐けなかったのでしょうか。 やはりアイドルはハッピーや笑顔を届けるアイコンであってほしい。そう世間も思うでしょうし、私自身もそんなアイドル像を目指していました。 なので、メンバーやスタッフさんの前ではもう少し人間らしくと言いますか、時に「疲れた~」「体調がしんどい」と弱音を吐いてもよかったと思うんです。でも、私はそれができずにバックヤードでも「自分はこういう風に振る舞いたい」「こういう風に見られたい」「自分といると居心地がいいと思われたい」と思ってしまいました。 自分がどうしたいというよりも、相手にとってどう振る舞うべきかを考える性格ということも影響していると思います。 ――心理カウンセラーの勉強は大変だったと想像しますが、振り返ってみて、どんなことが印象に残っていますか。 最初は次のキャリアのために勉強していたのですが、勉強を進めるにつれ、自分自身の心を守る方法を知り、過去に自分自身の中で何が起きていたのかを振り返ることができました。心理学やカウンセリングに関する知識を身につけることは、私自身のためにもすごくいい時間でした。特に、自分と他人の境界線を意識して人間関係を築くと随分楽になるということは大きな発見でした。 私自身もすぐに共感してしまったり、他者との距離感が近くなりすぎたりして、周りの人たちの悲しみやイライラをもらってしまうことがあって。相手の立場に立ち自分のことのように相手の気持ちを考えることができてしまうからこそ悩んでしまう。悲しいニュースを見聞きして、数日間ショックを引きずってしまったりする方もいらっしゃると思います。そんなときは自分と他人の線引きをきちんとすること。それは決して冷たいことではなくて、自分自身を守るためのひとつの術としてお伝えできたらいいなと思っています。