「新藤兼人賞」第29回授賞式、「プロデューサーの皆さんに感謝」と山中瑶子監督
日本映画の独立プロダクションによって組織される日本映画製作者協会(日映協)に所属する、現役のプロデューサーが選出の「新藤兼人賞2024」第29回授賞式が12月6日、都内で開催された。 この賞は、独立プロの先駆者である故新藤兼人監督の名を冠し、有望な新人監督と、活躍したプロデューサーを顕彰するもの。今年公開された作品の中から215作品が選考対象となり、最終選考監督12人の中から金賞は「ナミビアの砂漠」の山中瑶子監督、銀賞は「侍タイムスリッパー」の安田淳一監督が受賞した。また、優秀な作品の完成に貢献したプロデューサーや企画者の功績を称えるプロデューサー賞は「箱男」「あんのこと」「若武者」の関友彦氏(コギトワークス代表)が受賞した。 日映協の押田興将代表理事が挨拶に続いて、プロデューサー賞の選考理由と経緯などを説明。関氏が3作品の製作について述べた。「箱男」は安倍公房の同名小説を石井岳龍監督が27年越しに映画化。「あんのこと」はある少女の人生をつづった新聞記事に着想を得て、入江悠監督が撮りあげた人間ドラマ。そして、「若武者」は二ノ宮隆太郎が監督・脚本を手がけた、新プロジェクト「New Counter Films」レーベル第1弾作品。関氏は受賞の感謝を述べつつ、「映画のプロデューサーを若い人たちが憧れるような職業にしたい」などと抱負を語った。 続いて、永井拓郎審査委員長が金賞、銀賞の選考理由を講評とともに述べた。「ナミビアの砂漠」は、初監督作「あみこ」が高く評価された山中瑶子が監督・脚本を手がけ、「あんのこと」の河合優実を主演に迎えて撮りあげた青春ドラマ。第77回カンヌ国際映画祭の監督週間で国際映画批評家連盟賞を受賞した。山中監督は「ご迷惑もかけ、一丸となって映画を作ることが好きではないような私に機会を与え、性格を理解し、支えてくれたプロデューサーの皆さんに今日は感謝したいと思います」などと述べ、UDCast賞も贈呈された。 「侍タイムスリッパー」は、現代の時代劇撮影所にタイムスリップした幕末の侍が、時代劇の斬られ役として奮闘する姿を描いた時代劇コメディ。安田監督が脚本、撮影、編集なども手がけ、自主制作作品でありながら東映京都撮影所の特別協力によって完成させた。都内一館のみで封切られたが、口コミで話題が広まったことからギャガが共同配給につき、全国100館以上で拡大公開されている。安田監督は「この映画の制作、公開に関わってくれたすべての皆さんの心意気がこの賞の受賞につながった。これからも“費用対効果”を重視した、幅広い層に楽しんでもらえる映画を作っていきたい」などとし、感謝を述べた。 なお、本年度より、新藤兼人賞で見いだされた新しい才能をNetflixが支援することとなった。受賞者と最終選考者にはNetflixへの企画提案の機会、企画・脚本開発の費用が用意、支援され、Netflix作品の制作にチャレンジできる。 さらに日映協は、映画スタッフを育てるプロジェクトをスタート。映画・映像の制作スタッフ養成講座(仮)を2025年春に開講する予定だ。第一線で活躍するプロデューサーらが講師を務め、受講修了者には撮影現場参加の機会が提供される。