「点」で動く総裁選、まだ見えぬ「大きな流れ」 河野氏と石破氏には「出馬のハードル」秘書官人事〝凍結〟で広がる憶測
【岩田明子 さくらリポート】 9月の自民党総裁選に向け、岸田文雄首相や「ポスト岸田」と目される有力者の動向が相次いで報じられている。だが、いまだ霧の中だ。「点」としての動きは見られても、大きな流れが見えてこない。 【表でみる】総裁選出馬が予想される主な顔ぶれ 最近の主な動きを整理すると、菅義偉前首相がインターネット番組や月刊誌で、岸田首相に「事実上の退陣要求」を突き付けた。これに対し、岸田首相は、麻生太郎副総裁と2週連続で会食したり、6月27日には会食をはしごして石破茂元幹事長や森山裕総務会長らと会った。党内では「再選に向けた支持を取り付けるための動き」とみられている。 「ポスト岸田」候補の動きとしては、河野太郎デジタル相が麻生氏に総裁選に出馬の意欲を伝え、石破氏も立候補に向け調整していると報じられた。若手・中堅には小林鷹之前経済安保相を推す動きもあるとされる。 確かに、個々の動きは活発化しているが、総裁選には「熱」「羅針盤」「実働部隊」が必要であり、そうした面を牽引(けんいん)する有力者の存在が不可欠だ。つまり、総裁選の「絵」を描くキーマンがまだ見当たらない。菅氏や麻生氏、森山氏といった「役者」はいるが、3氏が誰を担ぐかは明確になっていない。 そもそも、総裁選への「意欲」や「調整」が伝えられた河野氏と石破氏には、「出馬へのハードル」がある。 小泉進次郎元環境相と合わせて「小石河連合」と呼ばれる3氏は、菅氏が「将来の首相候補」として期待を寄せる存在だ。3氏は自民党内で「選挙に強そうな人たち」として支持を集めており、バラバラに出馬しては票が割れるリスクがある。現に、石破氏は前回2021年の総裁選で、菅氏や小泉氏とともに河野氏を支援した。党内支持層が重なるだけに、今後調整を図る必要が出てくるのではないか。 河野氏の場合、別の配慮も必要となってくるだろう。 同じ神奈川県選出で菅氏と近い一方、自民党で唯一、派閥として存続する麻生派に所属している。菅氏と麻生氏は「政治的距離」が伝えられており、どちらについても「板挟み」の状況となる。さらに、岸田内閣の現職閣僚であることも、表立った動きを取りにくくしている 派閥解消の影響もあり、今回の総裁選はかつてないほど読みにくい展開となることが予想される。今後の注目点の一つは、岸田首相が総裁選への態度をいつ明確にするかだ。