NHK「カムカムエヴリバディ」再放送 「最後の伏線回収」
【牧 元一の孤人焦点】2021年11月1日から22年4月8日まで放送されたNHK連続テレビ小説「カムカムエヴリバディ」の再放送(月~金曜、後0・30、全112回)が11月18日にスタートする。 【写真あり】感動の最終回が話題になった「カムカムエヴリバディ」ヒロインの上白石萌音、深津絵里、川栄李奈 <※以下、物語のネタバレ有> 14、15の両日にはPR番組「あなたが選ぶ思い出のワンシーン」(後0・30)が放送されるが、個人的に、このドラマで強く印象に残っているのは、21年12月22日放送の第38回だ。 ヒロインの安子(上白石萌音)が娘のるい(子役の古川凜)に「アイ・ヘイト・ユー(大嫌い)」と告げられ絶望。この回の後、安子は画面から姿を消し、2代目ヒロインのるい(深津絵里)の物語となる。 子供が発する「アイ・ヘイト・ユー」という言葉に強い衝撃を受けたし、初代ヒロインの行方が分からなくなってしまうというミステリータッチの展開に強い興味を抱いた。 そして、物語のヤマ場となるのが、22年4月7日放送の第111回。晩年の安子(森山良子)がるい(深津)と再会し、「アイ・ラブ・ユー(愛している)」と告げられる。この回には、「アイ・ヘイト・ユー」と言われた当時の安子(上白石)が、第38回以来初めて回想シーン以外で登場し、るい(古川)と涙ながらに抱き合うという幻想的なシーンが盛り込まれている。 上白石の再出演は深く心に残ったし、そのシーンによって母娘孫の100年にわたる物語の終幕が間近に迫っていることを深く実感した。 制作統括の堀之内礼二郎さんはこう振りかえる。 「私の中に、上白石さんをいちばん悲しい終わり方のまま去らせてしまったという思いが残っていました。だから、最終週の台本を読んだ時、上白石さんをもう一回迎えられると思い、救われる気がしました。安子とるいがあの時から50年後に再会する。るいはあの時に本当は言いたかったことを言う。このシーンにはカタルシスがあります。つらいことや悲しいことがあっても、いつか報われる時が来るという、このドラマの本質的なシーンだと思います」 翌日の第112回(最終回)も印象深い。未来となる2025年を描いたラストシーンで、三代目ヒロインのひなた(川栄李奈)がかつての職場の映画村を訪れ、初恋の相手だったビリー(城田優)と再会する。 物語の結末でありながら、さらなる未来を予感させ、明るい余韻を残した。 堀之内さんはこう話す。 「制作当時はコロナ禍でしたが、コロナ禍の先まで描きたいと思っていました。25年に映画村で、ひなたとビリーが再会した時、誰もマスクをしていません。あのシーンには、その頃にはコロナ禍が終わっていますように…という願いが込められています。現実の25年にあのシーンをみんなで見たいと思って、実は、22年の放送終了直後からずっと、今の時期の再放送に向けて動いていました。これが、この作品の、最後の伏線回収になるのかもしれません」 現時点では、最終回は25年4月末に再放送される予定という。 朝ドラ史上に残る壮大で多角的な伏線の、感動的な回収の道筋を、もう一回最初から楽しむことにしよう。 ◆牧 元一(まき・もとかず) スポーツニッポン新聞社編集局文化社会部。テレビやラジオ、音楽、釣りなどを担当。