“注文の多い国オランダ”でストライカー小川航基は完成品に仕上げられつつある。「俺はともかくゴールを取りたい。だけど…使われなくなっちゃうんでね」【現地発】
最初に渡されたのは「チームのプレスの掛け方」の日本語メモ
フェイエノールト戦の後半、小川はマーク役のベーレンを地上戦でも空中戦でも圧倒した。もともとボールを収める技術の高い選手だけに、身体を張ってDFをブロックし、先に良いポジションを取れば安定したポストプレーができる。 また、小川が「綺世くんのプレースタイルが変わった」というコメントは、上田本人もCLの対レバークーゼン戦後に認めていたこと。これまでDF背後の裏抜けを頻繁に狙っていた上田は、まずは前線中央で敵を背負ってポストプレーしながら、「ここぞ」というタイミングで得意の武器の裏抜けを相手に突きつけるようになった。こうした変化は9月の日本代表シリーズでも如実に表われていた。 オランダのストライカーはエゴが強く、得点への執念が尋常ではない反面、オランダサッカー界がストライカーに求める要求は非常に高く、ゴール以外のところの仕事が多岐に渡る。パトリック・クライファート以降、ブライアン・ブロビーの誕生まで、アヤックスの育成システムが自前のストライカーを育て上げることができなかったのは、彼らのコンプレックスになっていた。その背景には「オランダの若いストライカーは多くのことを要求されすぎ、とりわけアヤックスは若いストライカーに求めるもののレベルが高すぎ要求過多だ」という意見を聞いたことがある。ゴールの嗅覚だけ秀でているストライカーは、アヤックスの生存競争には勝てない。 小川はオランダで徐々にストライカーとして完成品に仕上げられようとしている。小川がNECから最初に渡されたものは、「チームのプレスの掛け方」を説明した日本語の文章だった。それでも行き着く先は「自身のゴールでチームを勝たせるストライカー」であるということ。 「俺はともかくゴールを取りたい。そっち側のストライカーを目ざす。だけど求められるものもちゃんとやらないと試合で使われなくなっちゃうんでね」と小川は言った。そのエゴもまた、オランダのストライカーに求められることである。 取材・文●中田 徹
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