サバトの「グッチ」第一楽章が終了か? 2025年春夏は、「大事なことは、何度も伝える」の集大成
もう少し詳しく、「さりげない壮大さ」を3つの視点で紐解いてみよう。まず「引き続き『神は細部に宿る』と信じてデビュー以来提案し続けるアイテムを進化」させる姿勢は、徹頭徹尾感じるが、特に序盤で顕著だ。例えばタンクトップにスラウチ(肩の力を抜いてリラックして履ける)パンツのルックは、デビュー・コレクション同様に深く胸をえぐって緑・赤・緑の“ウェブ”ストライプのトリミングを飾ったタンクトップと、25年リゾートのデニムや25年春夏メンズに登場したパンツのようなシルエット&着こなし方で、前回踏襲の要素がかなり強い。ここに、“バンブー”を象ったゴールドのブレスレットを二の腕に飾った。序盤の主役は、テーラリング。コンパクトなジャケットからレザーブルゾン、脇腹にスリットを刻んだ膝丈のコートに至るまで、端正なシルエットで美しい。
するとコレクションは徐々に、「最大限に美しく見せるべく、時には豪華な装飾を厭わない姿勢で日常着を昇華」という性格を帯びてくる。中盤以降はビーズの装飾、24-25年秋冬ウィメンズ以降度々登場するレモンイエローやオレンジなどの色、そして、“ホースビット”のモチーフなどが増え、1960年代のリゾートムードを醸し出す。とは言え、コンパクトなジャケットや裾にペプラムを加えたブルゾンなどは、従来、もしくは前半に登場したシルエットのアイテムで、引き続き日常着から逸脱しないようにという意識は強い。コートやドレスには度々、大輪の花が咲いた。そしてフィナーレは、冒頭に登場したタンクトップに腰履きするデニム、そこにまるでガウンのようなマキシサイズの“GG”モチーフのコートを羽織った。トレンチやモッズ、ステンカラーコートとベーシックだが、極端なオーバーサイズにすることで、タンクトップとデニムのスタイルに迫力を備える。
こうした、シンプルに徹するアイテムやスタイルと、日常着を超えない範疇で装飾や意匠を加えたアイテムやスタイルの組み合わせで、「『さりげなさ』の『壮大』なる世界を見せつけた」印象がある今回のコレクション。だからこそ、第一楽章はエンディングを迎え、次のシーズンは新たなステージが始まるのではないか?とワクワクする。
パリは一足早く、ミラノも25年春夏は、「クワイエット・ラグジュアリーの先へ」という流れが顕著だ。