大相撲秋場所の優勝一夜明け会見で笑顔を見せる大の里（撮影・小沢裕）

　大相撲秋場所で2度目の優勝を果たし、13勝2敗で大関昇進を確実にした関脇大の里（24＝二所ノ関）が23日、茨城県阿見町の部屋で一夜明け会見に臨んだ。14日目に優勝を決めたが豪雨被害にあった地元の石川を「自分が勝って優勝を決めて勇気づけたかった」。25日の九州場所（11月10日初日、福岡国際センター）番付編成会議と理事会を経て、史上最速所要9場所での大関昇進が正式決定。「ちょんまげ大関誕生」と題し3回連載をお届けする。 　淡々と質問に応じていた大の里が「地元」への思いに口調を強めた。「絶対、土曜日（14日目、21日）に自分が勝って優勝を決める思い。大変な状況にあった地元を元気づけたい、勇気づけたい。たくさんの声援をもらって15日間戦えたのは幸せだったので」。 　石川能登地方が記録的大雨に見舞われたのが21日から。年明けの地震に続き、地元を襲った自然災害に心を痛めながら決意に燃えた。土俵では1度も勝っていなかった大関豊昇龍との一番。気迫に満ちた相撲で優勝を決めた。目指す姿を「何でしょうかね。人間味あふれる力士ですかね」と言った。言葉通り、気持ちを全面に出した優勝だった。 　振り返る時間は過ぎ、大きな儀式が待つ。大関昇進の伝達式。口上に関しては「何も考えてないです。真っ白です」。場所中も大関とりを意識したことはなかったと言い、何度も「発表まだですから。関脇ですから」と繰り返した。 　唯一、つながったのはしこ名の由来となった「大ノ里」の話。大正から昭和初期にかけて活躍した名大関の地元、青森県南津軽郡を8月に訪れて熱烈な歓迎を受けた。「地元で語り継がれている名大関。その番付まではいきたいと。名前をいただいた力士の地位にいけるのは光栄です」。 　身長164センチ、体重も90キロ台という小兵で立派に大関を張った。体的には大きく恵まれている大の里だが、その「精神」を受け継ぐ。「番付は上がっても気持ちはまだまだ変わらずにやりたい」。新大関大の里が、令和の大相撲新時代を築いていく。【実藤健一】