2023年の消費額は「過去最高」の5兆2923億円。急速に回復するインバウンド需要はさらに加速するのか? カップ麺を買い込む中国人観光客の姿も
ニッポンの2024年問題とは?#9
新型コロナウイルスによる未曾有のパンデミックにより打撃を受けたインバウンド需要が、急速な回復を見せている。オーバーツーリズムや関連施設の人手不足などの諸問題も指摘されているなか、2024年はどのような傾向が予想されるのか。その実態を調査した。 【図を見る】JTBが発表した「2024年(1月~12月)の旅行動向見通し」における2024年の年間旅行動向推計数値
インバウンド消費はコロナ禍前を超える水準に
新型コロナウイルスの蔓延で落ち込んだインバウンド(訪日外国人旅行)需要が、順調な回復を見せている。 観光庁が2024年1月17日に発表した「訪日外国人消費動向調査」によると、2023年の訪日外国人旅行者による年間消費額は推計5兆2923億円と、前年比約5.9倍を記録。パンデミック前である2019年の年間4兆8135億円をも上回る数字を叩き出した。 そしてその勢いは、2024年も続きそうだ。JTBによる2024年(1月~12月)の旅行動向見通しでは、訪日外国人旅行者数は過去最高の3310万人(前年比131.3%)と推計している。 また観光庁もインバウンド回復などの影響を受けて、2024年度の当初予算を503億1800万円(前年度比約64%増)とすることを、昨年末に発表。引き続き、「持続可能な観光地域づくり」「国内交流拡大」「地方を中心としたインバウンド誘客の戦略的取組」を計画の柱としている。 この急速な回復の背景としては、水際対策の緩和や新型コロナウイルスの「5類」移行などが挙げられるが、円安による“割安感”も追い風となっているようだ。実際、観光庁によると2023年における訪日外国人旅行者1人あたりの平均旅行支出額は「21万2000円」と、コロナ禍前の2019年と比べて約34%増加した。
国・地域別の観光客数は1位・韓国、2位・中国
では、現在どこの国から多くの観光客が日本を訪れているのか。2023年の訪日外国人旅行者の数を、国・地域別に見てみよう。 以下は日本政府観光局(JNTO)が発表した推計値の上位5カ国であるが、ほとんどの国でコロナ禍前を上回るか、それに近い水準となっていることがわかる(括弧内は2019年比)。 ◯韓国 6,958,500(+24.6%) ◯台湾 4,202,400(-14.1%) ◯中国 2,425,000(-74.7%) ◯香港 2,114,400(-7.7%) ◯米国 2,045,900(+18.7%) (出典:日本政府観光局「訪日外客数(2023年12月および年間推計値)」より一部抜粋) そのなかで、中国に関しては、旅行者数・消費額ともにコロナ禍前の水準には達していない。回復が鈍化している要因としては、経済悪化や渡航に関する制限、国際旅客定期便の減少などが指摘されているが、JTBは「ゆるやかながら着実に増加しており、2024年は個人旅行を中心に回復が進むものと想定」としている。 訪日外国人旅行者の消費において、中国人観光客の存在は見逃せないだろう。2015年には日本の商品を大量に買い込む中国人観光客の「爆買い」がユーキャン新語・流行語大賞を受賞したことも、いまだ記憶に残っている。 実際のところ、戻りが鈍化しているとはいえ、国籍・地域別における2023年の訪日外国人旅行者の年間消費額では、1位の台湾(7786億円)に次いで、中国は全体2位に位置(7599億円)。さらに中国人観光客1人あたりの平均旅行支出額は「31万9924円」と、韓国(10万7047円)、台湾(18万7921円)、香港(22万7160円)、米国(29万6411円)などと比べても高い数字となっている。
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