社説:COP29 脱炭素に向け試練の時
国際的な脱炭素の機運を維持、発展させられるか、正念場といえよう。 国連気候変動枠組み条約第29回締約国会議(COP29)が22日までの日程で、アゼルバイジャンの首都バクーで開かれている。 発展途上国の温暖化対策を支援する「気候基金」へのさらなる資金拠出が主要議題だ。 現在の気候変動をもたらした温室効果ガスを大量排出した責任を踏まえて、先進国は2009年のCOP15で毎年約1千億円の拠出を約束した。必要な対策加速に向け途上国は今後、10倍に増やすよう求めている。 水没の危機に直面する南太平洋やインド洋の島しょ国、干ばつに悩まされるアフリカ諸国をはじめ、気候変動の影響が深刻化している。インフラ整備や再生可能エネルギーの導入などへ支援は欠かせない。 しかし、合意への道はもとより険しい上、米国で脱炭素の「パリ協定」からの再離脱を公言するトランプ前大統領が返り咲くことに、大きな動揺が広がっている。 トランプ氏はバイデン政権が約束した温暖化対策への資金拠出を撤回する方針という。世界第2位の温室効果ガス排出国が再び脱落すれば、世界の気候変動対策は極めて深刻な停滞、後退を招く。 世界気象機関(WMO)によると、今年1~9月の世界の平均気温は産業革命前の平均気温に比べ1・54度上昇した。年間の平均気温は観測史上最も高くなるという。産業革命前からの気温上昇を1・5度に抑えるパリ協定の目標は遠のくばかりだ。 欧州も、ウクライナ支援で資金拠出が圧迫されている。厳しい状況でも、各国は国際協調の重要性を改めて確認し、議論と対策を前に進めてもらいたい。 議長国のアゼルバイジャンはCOP29に合わせ、世界のエネルギー貯蔵量を大幅に増やす有志国誓約を提唱した。日本も参加する方針だ。 蓄電池などの規模を国際連携で増やし、出力が変動する再生エネルギーの安定的な供給体制を整え、普及を広げる。送電網の強化も誓約に盛り込む。こうした協力の積み上げで脱化石燃料と脱炭素の流れを加速させる必要がある。 日本は、かつて米国が京都議定書から離脱すると様子見的な姿勢もみられたが、深刻化する気候災害を考えれば停滞は許されない。途上国支援を明確にし交渉を先導すべきだ。