百貨店にもスーパーにも太刀打ちできない「コンビニの牙城」に迫ったミニスーパーの驚きの戦略
■ミニスーパーが攻めたコンビニの滞り ちなみに、この物流の話にはもう少し続きがあります。 ドミナント戦略で売上高を大きく伸ばしてきたコンビニですが、最近はその「天敵」としてミニスーパーが出てきました。 コンビニはとても便利ですが、その代わり、商品価格は高めに設定されています。ただ、もともと商品の単価は低いので「1000円以内で買える」といった感じで、消費者は少ない予算でやりくりできます。 ところが、近年はコンビニのそばにミニスーパーが出店されるようになりました。 ミニスーパーは名前の通りスーパーの延長ですから、割安な商品が並んでいます。 コンビニで買い物しようと思った人の目にミニスーパーが入ってくると、「同じような商品だし、ミニスーパーで買おう」となるのです。ドリンク類などもコンビニよりも安く売られているケースが多くなっています。 ■深夜営業は切り捨てて、コンビニに任せてしまう 加えて、ミニスーパーはコンビニとは異なり深夜営業は行っていません。真夜中のオフピークはしっかりと休むのです。 これまでもコンビニの弱点は「24時間営業なので、深夜のお客さんの来ない時間帯も営業しなければいけない。スタッフの確保や人件費などが大きな負担になる」といわれています。 本部のほうは深夜も営業すれば売上高が増えるのでありがたいのですが、現場の店舗のほうは利益率も上がらず苦労しているのです。 これに対して、ミニスーパーはこのオフピークを切り捨ててしまっています。しかも、ミニスーパーが深夜に営業していなくても、近隣のコンビニが営業してくれているおかげで、消費者は困りません。ミニスーパーが深夜営業をしなくても、誰も困らないのです。 要するに、「日中のピークには営業してコンビニのお客さんに食い込み、割の合わないオフピークはコンビニに任せてしまう」という戦略になっているのです。 このようにミニスーパーはピークとオフピークの特徴をつかみながら、仕事量を工夫し、ビジネスの「滞り」を解消することで、「百貨店やスーパーではとても太刀打ちできない」といわれてきたコンビニの牙城(がじょう)に迫ることになったのです。 ---------- 鈴木 邦成(すずき・くにのり) 物流エコノミスト、日本大学教授 一般社団法人日本ロジスティクスシステム学会理事、電気通信大学非常勤講師(経済学)。専門は物流およびロジスティクス工学。物流改善などの著書、論文多数。普段から学生やビジネスパーソンから専門分野に関する相談を受ける一方で、就職、転職、資格試験の勉強方法、職場での時間管理や人づきあいなど、幅広い悩みについても意見を求められるという。そうしたやりとりのなかで、物流・ロジスティクス工学の知見を、「仕事や人生の滞りをなくす」という視点から悩みに当てはめることで、思いがけない解決策を導けることに気づく。主な著書に『トコトンやさしい物流の本』『入門 物流(倉庫)作業の標準化』『トコトンやさしいSCMの本』(いずれも日刊工業新聞社)、『シン・物流革命』(中村康久氏との共著、幻冬舎)、『物流DXネットワーク』(中村康久氏との共著、NTT出版)などがある。 ----------
物流エコノミスト、日本大学教授 鈴木 邦成