トヨタ、グループ不正を受けて新しいビジョンを策定。豊田章男会長が「グループ責任者」として全責任を負う覚悟を表明
トヨタ自動車は、1月30日、愛知県名古屋市にある「トヨタ産業技術記念館」において、「トヨタグループビジョン説明会」を開催した。日野自動車、ダイハツ工業、豊田自動織機と続いた主に認証における不正を受けた、トヨタグループ17社の会長・社長・リーダーを集めて新しいグループビジョンの説明を行なったあと、報道陣への説明と質疑応答を豊田章男トヨタ自動車会長が行なった。その全発言をお届けする。
豊田章男会長のプレゼンテーション
豊田でございます。本日は、ご多用の中、ご足労いただき、誠にありがとうございます。先ほど、私たちの原点とも言えるこの産業技術記念館に、トヨタグループ17社の会長、社長、現場のリーダーが出席し、トヨタグループの進むべき方向を示したビジョンと心構えを全員で共有いたしましたので、皆様にご報告申し上げます。 最初に、トヨタグループの歴史について少しお話をさせていただきます。こちらをご覧ください。これは、1895年、トヨタ商店の設立に始まるトヨタグループの系譜です。 苦労する母親を少しでも楽にさせたい。その一心で豊田佐吉は1890年、豊田式木製人力織機を発明いたします。誰かを思い、学び、技を磨き、物を作り、人を笑顔にする発明の情熱と姿勢こそトヨタグループの原点であると私は思っております。その後、豊田紡織、豊田自動織機製作所の設立へとつながり、系譜図ご覧のように縦に置いてまいります。 1930年代に入りますと、豊田喜一郎が立ち上がります。当時の日本の工業は、技術水準において欧米に大きな後れを取っておりました。ただ自動車を作るのではない、日本人の頭と腕で日本に自動車工業を作らなければならない、その一心で喜一郎はこの国の産業のモデルチェンジに挑んだわけでございます。部品、鉄、ゴム、電池、多くの会社がトヨタと歩み始めます。さらに、独自の個性や強みを持つ会社との提携が進み、トヨタグループの系譜図は横に広がってまいります。未来を切り開くぶれない意志により進化し続ける縦の系譜。同志、志を同じくする仲間とともに進化し続ける横の系譜。私たちはこれまで、先人たちが紡いでくれたこの縦糸と横糸で織りなされた自動車産業の中で生きてきたと言えます。しかし、自動車産業が発展し、グループ各社が成功体験を重ねていくなかで、大切にすべき価値観や物事の優先順位を見失う。恥ずかしながら、そんな状況が発生してまいりました。 最初にその事態に直面したのが、他でもないトヨタ自動車でした。もっといいクルマを作る。それよりも台数や収益を優先し、規模の拡大に邁進した結果、リーマンショックにより創業以来初めての赤字に転落。自動車産業をお支えいただいている多くの方々にご迷惑をおかけすることになりました。さらには、世界規模でのリコール問題により、最も大切なお客様の信頼を失うことにもなりました。私はこの時、 トヨタは一度潰れた会社だと思っております。そこから私自身のすべてをかけて、仲間とともに、ようやくクルマ屋と言えるところまで立て直してまいりました。しかし、創業の原点を見失っていたのはトヨタだけではありませんでした。今、グループ各社にも当時のトヨタと同じことが起きている、私はそう思っております。 2009年のリコール問題の時、私は、トヨタの責任者として、現在、過去、未来、すべての責任を背負う覚悟を決めました。あれから14年、トヨタグループ全体の責任者はこの私だと思っております。今、私がやるべきことは、グループが進むべき方向を示し、次世代が迷った時に立ち戻る場所を作ること。すなわちグループとしてのビジョンを掲げることだと考えました。 トヨタグループの原点は、多くの人を幸せにするために、もっといいものを作ること、すなわち発明にあります。次の道を発明しよう。このビジョンのもと、ひとり一人が自分の中にある発明の心と向き合い、誰かを思い、技を磨き、正しいものづくりを重ねる。お互いにありがとうと言い合える風土を築き、未来に必要とされるトヨタグループになる。本日、私たちの原点とも言えるこの産業技術記念館で、そう誓い合いました。 私自身が責任者としてグループの変革をリードしてまいりますので、皆様のご支援をお願いいたします。 最後になりますが、日野自動車、ダイハツ工業、トヨタ自動織機の相次ぐ不正により、お客様をはじめステークホルダーの皆様にご迷惑、ご心配をおかけしておりますことを深くお詫び申し上げます。 当初、グループビジョンは豊田佐吉の誕生日である2月14日に共有する予定でございましたが、昨今のグループ会社の状況を踏まえ、前出しをして実施し、メディアの皆様にも発表させていただくことにいたしました。本日は、グループビジョンをベースに、皆様からのご質問にお答えさせていただければと考えております。どうぞよろしくお願いいたします。