<人口ゼロ=集落の終わり>ではない!「無住集落」の3つの形と「撤退」戦略の好事例、再興を意識した前向きな「縮小」とは
多種多様な姿を見せる無住集落
次は、「(2)よく見られる集落とは言いにくいが、何らかの形で活用されている無住集落」の好例を二つ紹介する。 第一は、キャンプ場になった加賀市の無住集落である。もとの集落の面影は、あまり残っていないが、集落に関する石碑と案内板が整備されている(写真(5))。
第二は、牧草地として生き残っている七尾市の無住集落である(写真(6))。一般論になるが、牧草地には、「傾斜地でも広い土地を少人数で管理できる」「土壌を保持する力が強い(侵食の緩和)」という利点がある。全体的に人口が減少する傾向にあって、注目すべき土地利用といってよい。 最後に、「(3)深い緑で覆われた無住集落」の一例を提示しておく(写真(7))。人間側の都合で考えると残念かもしれないが、「自然にお返しする」というのも悪い選択肢ではない。
再興の望みを捨てない無理せず好機を待つ
過度な期待は禁物であるが、無住集落の「リアル」は、常住人口が減少しても、集落としての形を保持できることを示唆している。 筆者は、「活性化による常住人口の維持が難しい集落(常住人口あり)」の長期的な生き残り策の一つとして、次のことを提言したい。 まず、都市部などから集落への無理のある転入促進、雇用増加を第一とした産業振興などを縮小し(一時停止し)、いったん、立ち止まって考える余力をつくってみてはどうかということである。 次に、当事者全員で、将来的な再興に必要なもの(後述)を抽出し、それを確実に保持することに注力してはどうかということ。一言で言えば、少し撤退し守りを固め、長期戦に耐える形に移行してはどうか、ということである。長期戦を前提に、少し便利なところに生活拠点をまとまって移す(集落移転)という選択肢もある。 ただし、従来どおりの活性化などを含め、いずれを選択する場合でも、最も大切なのは当事者(元住民やその縁者を含む)同士の議論と全員の納得である。外部の人が地図と数字を見ながら考えるようなものではない。