師匠・談志よりもいい「芝浜」を 立川志らく、師走恒例「今年最後の独演会」に臨む
落語家、立川志らく(61)が「1年間の集大成」と位置付ける師走恒例「2024今年最後の立川志らく独演会」(12月21日午後1時開演、東京都千代田区の有楽町よみうりホール、産経新聞社主催)に臨む。14回目の今年は、鬼才と呼ばれた亡き師匠、立川談志をことのほか意識した、緊張感たっぷりの高座となりそうだ。 志らくは還暦を迎えた前回の独演会から、談志の十八番で夫婦の愛情を描く人情噺「芝浜」を「69歳になるまで毎年披露する」と宣言した。「落語家の爛熟期とされる60代に、談志が愛した『芝浜』を上演することで、自分の中のパフォーマンスの変化を楽しみたい」との意図だ。 昨年の独演会後、ふと思った。「何度も『芝浜』をかける価値や魅力の一つには、『師匠の十八番に弟子がどうチャレンジするのか』と、落語ファンに期待させることもあるだろう」 それならば、自分なりの「芝浜」を…とはいかなかった。「談志の幻影からどう逃れるのか。常に課題となった」と振り返る。 志らくは天才的に器用過ぎるのだ。「やろうと思えば師匠そっくりに『芝浜』を再現できますからね。談志よりもいい『芝浜』を見せなければならない」 例えばクライマックス直前に鳴る除夜の鐘。談志は家でくつろぐ主人公夫婦に「108つ」「108つ」…と何度も優しくささやくように言わせた。 「では怒鳴ってみようというのはだめ。でも、言わないわけにもいかない。そのさじ加減にずっと悩み、自然にどんな表現が出てくるかを高座で試してきた」 志らくは前回披露した自身の「芝浜」について、「師匠は『入り口には立ったな』ぐらいのことは言ってくれるんじゃないかな」と話す。(高橋天地)