中国人旅行客らに人気の奈良公園

10月1日は中国の国慶節（建国記念日）だが、1日から7日までの中国版「ゴールデンウィーク」（大型連休）は今年の航空運賃値下げもあり、連休中に延べ19億4000万人が国内外を移動すると見られている。だが、景気低迷で多くの旅行者は節約志向で、必ずしも支出増にはつながらないと旅行業界関係者は分析している。 【全画像をみる】中国の大型連休は延べ19億人以上が移動。旅行者数はコロナ禍前比２割増も節約志向くっきり ロイター通信によると、中国政府は国内の運輸部門が扱う1日平均の旅行回数は前年比0.7％増にとどまると予測している。また、同国の旅行予約サイト「トリップ・ドットコム」によると、 GW期間中に国内旅行者の約６割が長距離旅行に出かけ、これは昨年の約4割に比べ、大幅に増加している。 一方、海外旅行先としては日本が最も人気で、次いでタイ、韓国などが続いている。ほかにも、香港やマカオなどアジアの近場が上位を占めているが、オーストラリアや英国、フランスなどの長期滞在型も増えているという。 別の大手旅行サイト「フリギー」のチャン・チェン副社長は、ホテルと航空券の料金が昨年より低価格に抑えることができたため、旅行者数の大幅増につながっていると指摘した。 例えば、今年のGW期間中、上海から深センへの直行便の最安値は、税抜きで297元（約6000円）から。これは通常のピークシーズンの運賃より少なくとも200元（約4000円）安い。中国の航空データ情報会社ダストによると、このような割引は他の路線にも適用され、9月中旬の時点で国内航空運賃は休暇シーズンの平均で昨年より約21％安かった。 中国のデジタルマーケティング会社会社ドラゴン・トレイル・インターナショナルの市場調査アナリスト、ジャニス・メン氏は香港紙サウスチャイナ・モーニング・ポストに、「異なる景色や文化を楽しみたいという中国人の欲求が高まり、さらに遠出する旅行者が増えた」と解説。特に「今年の10月は海外旅行のピークシーズンになると予想されている」と付け加えた。 景気低迷の中でも海外旅行の需要は堅調で、同社が実施した調査では回答者の約67％が今年海外旅行をしたか、旅行の予定があると答えた。 同紙は、中国人旅行者がビザなしで入国できる国、またはビザ申請手続きが簡単な国が増えていることや、航空運賃値下げで海外旅行が再開されたことも追い風となっていると説明。それは、さまざまな旅行サイトでも、今回の連休では海外旅行の予約が増加していることを示していると伝えた。 さらに、連休中の中国の航空便数はコロナ禍前の水準を大きく上回る見込みで、前出の航空データ情報会社ダストは、平均で1日230万人の乗客が航空機を利用すると予想。これは昨年から8.3％増、コロナ禍前の2019年と比べると21.9％増となる。鉄道も好調で、中国鉄道グループによると、9月29日から10月8日までの10日間に約1億7500万人が列車で移動すると予想されている。 文化観光省によると、昨年、中国人旅行者は9月の中秋節と国慶節の連休中に約590万回の海外旅行と8億2600万回の国内旅行に出かけ、国内観光収入は7530億元（約1兆5400億円）を超えた。今年の節約志向ではどの程度国内観光収入が増えるのか注目されている。 ただ、北京のシンクタンク「中国未来研究協会」のリウ・シミン氏はロイター通信に、「観光支出が昨年比横ばいであれば、それは良い結果といえるだろう」とした上で、「人々は経済が良い時に喜んで旅行するが、経済成長がなければ観光業の成長もない」と指摘した。