<万里一空・彦根総合23センバツ>支える人/3 上田修司コーチ 甲子園での経験を還元 /滋賀
「心でノックするから心で捕れ」。甲子園でノッカーを務める予定の上田修司コーチ(36)は練習に常に一番乗りし、大声を出す。自分が球児だった頃を思い出しながら、選手に的確なアドバイスを与える。 宮崎裕也監督(61)が率いた県立北大津高が2004年夏に初めて甲子園に出場した時のエース。監督に誘われ、20年に投手陣のコーチになった。彦根市出身で普段は家業のアユ養殖を行うが、シーズンが終われば毎日練習に駆け付ける。 コーチとして大切にするのは選手たちの考えを尊重することだ。「自分が選手だった時、一方的に教えられるのが嫌いな子もいた。それぞれに合った教え方を考えている」と話す。武元駿希投手(2年)は「体重移動が苦手だったが、自分に合うフォームを一緒に考えてくれた」という。自分が球児の時は「自転車をこぐ時も使う筋肉を意識し、さまざまな動きをする際もボールを扱う指先を意識していた」と話し、選手たちに「24時間が練習だ」と説く。 自身は甲子園の初戦で東北高のダルビッシュ有投手(現パドレス)と投げ合い、大敗した。「独特の風向きやスタンドの雰囲気、移動の時間を細かく指示されるなど普段と違う環境に適応できなかった」という苦い経験から甲子園を経験した者でしか分からない助言も送る。山田敬祐投手(2年)は「甲子園での動きを普段の練習から意識するようになった」と感謝する。 上田コーチは「野球以外の雑念を捨て、初戦を勝てば自分たちの野球で勝負できる」と甲子園の先輩として後輩たちの成長を願う。【飯塚りりん】