芳根京子を虜にした展覧会『モネ 連作の情景』が開催中!「360度、睡蓮や花に囲まれる感覚」
印象派のモネは代表作「睡蓮」や「積みわら」などのモティーフを季節や天候、時刻、光を変えて何度も描き、連作の先駆者とも言われる。そこに焦点を当てた『モネ 連作の情景』が大阪中之島美術館で開催中だ。今回音声ガイドを務め、フランスをはじめ、高知、本展の東京展でモネの作品をたどり、"モネ尽くし"を味わってきたという芳根京子が大阪中之島美術館を訪れた。 【全ての写真】芳根京子 今回はモネの初期作品を紹介する第1章「印象派以前のモネ」から連作に力を注いだ第4章「連作の画家、モネ」、フランスで晩年を過ごした第5章「〈睡蓮〉とジヴェルニーの庭」など5つの章に分かれ、国内外の美術館から約70点が集結。「大阪中之島美術館は新しいだけあってすごくきれい。天井の高さと空間の広さでより一層心穏やかに作品を見られます」と語る。 モネが後に妻となるカミーユと長男を描いた人物画《昼食》は、日本初公開。「東京展で見たら、作品の上半分は緑だと思っていたのに、ここで見ると黒に見える。光の入り方や距離感で変わるから面白いなと思いました」と驚く。《昼食》は、モネがサロン(官展)に落選し、本格的に印象派へと向かうきっかけになった作品。このころのモネは富も名声もなく失意の日々を送ることが多かった。「やりたいものが世の中に受け入れられない、評価してもらえない苦しみや葛藤は、役者の世界と通ずるものがあり、私も自分を信じてやりたいことを頑張ってやってみようと、すごく親近感がわき勇気をもらいましたね」。 その後、「積みわら」や、芳根が大好きだという《チャリング・クロス橋、テムズ川》など、モネは連作という自身のスタイルを確立していく。日本の浮世絵からも影響を受けているといわれ、「日本人として誇りに思いました」と顔をほころばせた。 最後を飾る通称「睡蓮の部屋」では《睡蓮の池》や《藤の習作》《睡蓮》など花尽くしの空間だ。芳根も「360度、睡蓮や花に囲まれるような感覚」だと興奮する。フランスで彼女が実際に見たモネの庭は、「意外に質素で静かな美しさをたたえていた」と言う。晩年のモネは白内障が進行し、抽象的な表現へと変わっていく。手術を受けるなど、視覚障害と闘いながら描いたモネの《薔薇の中の家》は、一見、どこまでが花でどこまでが家か分からないほど薔薇と空の色彩が溶け合う。こんな情景を見ながら晩年を過ごしたモネはさぞ幸せだったことだろう。芳根は「この素晴らしさは生で見ないと分かりません。モネの作品は光や色彩が美しいのはもちろん、香りも感じられる。連作を並べて鑑賞できる機会はなかなかないので、五感で感じて贅沢な時間を過ごしてほしい」と熱を込めた。 取材・文:米満ゆう子