55歳夫婦で貯金は「2000万円」です。子どもが成人したので、早期退職しても大丈夫でしょうか? 少しでも働き続けるべきですか?
働き方の多様化に伴い、早期退職やFIRE(Financial Independence, Retire Early、経済的自立と早期リタイア)など、定年を待たずに早めに会社で働くことをやめる選択をする人も増えています。特に子どもが大きくなり、夫婦である程度の蓄えがある場合、早期退職して余暇を楽しむという考え方も一般的になりつつあります。 しかし、完全に働くことをやめてしまうのは貯蓄額によっては大きなリスクを伴います。本記事では早期リタイアを考える際に留意すべきポイントを検討します。
2000万円では足りない? 60歳以降に必要な資金
図表1の総務省統計局が公表している2022年の家計調査年報(家計収支編)によると、65歳以上の夫婦のみの無職世帯では、可処分所得約21万4000円に対して、消費支出が約23万7000円となっており、必要な生活費が若干不足しています。 【図表1】
総務省統計局 家計調査年報(家計収支編)2022年(令和4年)結果の概要 もしも55歳で早期リタイアをした場合、年金収入はさらに減少する可能性が高くなり、不足額が拡大することが予想されます。仮に不足額が月5万円とすると、年間で60万円、20年間で1200万円となるので、年金受給開始が始まるまでの生活費も考慮すれば、完全なリタイアは高いリスクを伴うことが否めません。 さらに、世帯によって医療費が大きく異なります。そのため、予期せぬ病気や介護が必要になった場合のリスクなども検討しておく必要があります。
完全にリタイアはせず働き方を変える選択肢は有効
注目されているFIREは経済的自立と早期リタイアを指す言葉ですが、大きく分けるとFIRE後も働き続けるケースと完全にリタイアするケースがあります。 FIRE後も働き続けるスタイルは「サイドFIRE」や「バリスタFIRE」といったように、働き方によって呼び方が異なります。潤沢な貯蓄があるわけではないけれど早期リタイアを検討したいという人にとっては、魅力的な選択肢といえます。 精神的にも肉体的にも無理をせず長期間にわたって働き続ければ、年金受給額を大きく減らさずに、逆に増やせる可能性もあります。そうすれば将来の経済的不安も小さくなるでしょう。 また、働き方を変えるのにあわせて支出もそれに見合った額に抑えることができると、早期リタイアの成功につながりやすくなります。