藤井道人監督がひと目惚れした”台湾の最高な役者”は誰?『青春18×2 君へと続く道』の台北記者会見をレポート
藤井道人監督最新作にして初の国際プロジェクト、日台合作映画『青春18×2 君へと続く道』(5月3日公開)。3月13日に、台湾・台北市内で記者会見が行われ、W主演を務める台湾の人気スター、シュー・グァンハンと清原果耶、藤井監督、エグゼクティブ・プロデューサーを務めるチャン・チェンが登壇した。 【写真を見る】清原果耶と中華圏の大スター、シュー・グァンハンと笑顔で見つめ合う 台湾で話題を呼んだ紀行エッセイを原作とした本作。日本と台湾、18年前と現在を舞台に、せつなくも美しいラブストーリーを紡ぎあげる。18年前の台湾。カラオケ店でバイトする高校生のジミー(シュー・グァンハン)は、日本から来たバックパッカーのアミ(清原果耶)と出会い、いつしか彼女に恋心を抱く。しかし、ある日突然アミは帰国することに。時が経った現在、人生につまずき故郷へ戻ってきたジミーは、かつてアミと交わした“約束”を果たすために日本への旅を決意する。 会場には数々の台湾メディアが集まり、たくさんのフラッシュを浴びた。「ダージャーハオ(皆さん、こんにちは)。私は清原果耶です」と清原が中国語で挨拶を披露すると、台湾のマスコミ陣から歓呼の声が上がった。「皆さん、こんにちは。私はグァンハンです」とシュー・グァンハンも日本語で挨拶。お互いの言語で和気あいあいの様子で記者会見が幕を開けた。 本作は4人にとって、「初挑戦」がたっぷり詰まった1作になったとのこと。初の国際プロジェクトに挑んだ藤井監督は、「僕の祖父が台湾人です。まだまったく売れなかった20代のころに台湾で留学しており、自分の好きだった台湾の映画会社に『台湾で映画を撮りたいです』と自分で営業しに回った時期があって。その縁で今回のプロジェクトに僕を選んでもらえたという経緯があります。僕は人とのつながり、縁を大事にしています。やっぱり祖父が育った台南の町でこの映画を撮れることが、自分にとってとても特別なことでした」と本作の誕生秘話を明かした。 さらに、「撮影が終わってから、台湾で得たことを日本に持って帰って来られたと実感しました。お互いのいいところを認め合って、リスペクトし合って、映画を作れたことはとてもいい経験になりました。僕だけではなく、ほかの日本のスタッフも、いまでも台湾での撮影で学んだことを大事に新たな作品を作れているので、唯一無二の経験になりました」と語った。 ジミー役を務めるシュー・グァンハンは「とても特別な経験でした。初めてほかの国の言葉で演技をするので、僕にとってとてもチャレンジングなことでした。藤井監督の作品がとても好きで、藤井組へ参加することに憧れていたので、チャレンジではありますが、ちゃんと頑張りたいと思いました」と告白した。続いて、アミ役の清原は「台湾のいろんな場所で撮影できたことは、役作りにもつながり、アミとして過ごすことができました。土地の雰囲気であったり、その土地で出会う人たち、皆さんに助けられて撮影できました」と感謝の意を述べた。 デビュー作『牯嶺街(クーリンチェ)少年殺人事件』(91)から、近年の『DUNE/デューン 砂の惑星』(20)などで、俳優として多くの映画ファンに知られているチャン・チェンは、初めてエグゼクティブ・プロデューサーとして映画作りに関わったという。「いままで役者の役割と違って、今回プロデューサーにとして作品に関わるのは初めての試みです。映画作りにおいても新しい体験がたくさんあり、とても興味深いい経験になりました。今日の記者会見は少し緊張しています」と意外な一面を見せた。「役者として作品を選ぶ時は、暗黒でシリアスな作品を選びがちですが、観客として、感情がストレートでエネルギーがある題材が好きです。本作は僕が観客として好きなジャンルです。作品を通して、僕もこのような一面があるよと知ってもらいたいです」と笑いを誘った。 中華圏では大人気スターのシュー・グァンハン。「なぜ彼をキャスティングしたか」という現地のメディアから来た質問に対して、藤井監督が「18歳と36歳のジミーは同じ方に演じてもらいたいと最初から考えていました。それができる台湾の最高な役者は誰ですか?と聞いたら、ほぼ全員が『グァンハン』と答えました。実際に会ったら、すごくシャイなステキな男の子だったので、会ったその日のうちにジミー役をお願いしました」と答えた。実際の撮影について「旅をするジミーが雪国を見たり、日本で撮ったシーンはどれもとても印象深いし、ドキュメンタリーを撮っているような気分にさせてくれるいい経験でした」と振り返った。 「監督がおっしゃったように、日本での撮影は本当にロードトリップみたいで、一歩一歩、旅が進んでいきます」とシュー・グァンハンが頷いた。「本当にドキュメンタリーを撮っているみたいでした。例えば旅の途中で出会った方との別れのシーンとかも、1台のカメラが外で、1台のカメラが車の中で撮影し、本当にそのままお別れで、それぞれの旅を続けていきます。僕にとってはとても特別な経験で、演技をしているではなく、ジミーの行動をそのまま自分に投影させて記録してもらった感覚です」。 初共演した清原はシュー・グァンハンの魅力について、「優しくて紳士的。現場で毎朝『おはようございます』とご挨拶を交わし、そばにいてくれるから頑張ろう!と思えるような温かい存在でした」と語り、それを聞いたシュー・グァンハンは少し照れ笑いを見せる場面も。 ジミーとアミが一緒にバイク乗って夜の町を走るシーンが印象的な本作。清原が「バイクの二人乗りは初めてでしたので怖かったですけど、グァンハンさんの運転がお上手でした」と切り出した。恋人や好きな人と一緒にバイクに乗ることが、現地でも定番デートだという。「アミも絶対ここ(ジミーが運転するバイクの後ろ)で、階段を一歩ずつのぼっていくようにジミーへの気持ちを募らせていたんだろうなって思います」とにっこり。 バイクシーンをはじめ、台湾の風土人情を映しだされる本作について、清原はアミとジミーが一緒にアルバイトをした「カラオケ神戸」が印象的だったと挙げた。「あの日常感、人の温かさにアミはふれて生きていました。いま思い返しても心温まるようなシーンだと思います」。 台湾でも「美食天国」と呼ばれる台南。地元の甘口の料理がお気に入りだったという。「私は甘党なので、台南のご飯がすごくおいしくて。毎日ご飯のことを考えて撮影を頑張っていました」と清原は笑顔を見せた。「撮影現場でのお弁当のバリエーションの多さにびっくりしました。日本で撮影する時は、朝、昼、晩でたくさんのバリエーションの食事が出てくることはそんなにないので、すごく感動しました」と撮影時にびっくりした台湾の食事事情を語った。 今回のプロモーションイベントで再び台湾に訪れた清原と藤井監督。シュー・グァンハンは、「時間があったら、台北の保安宮、行天宮(台湾の有名な寺院)に案内して、台湾の伝統文化を体験していただきたいです。グルメでいうと、花生巻冰淇淋(ピーナッツアイスクリームクレープ)か、地瓜球(さつまいもを使用した揚げ菓子)など、台湾スタイルの夜市の食べ物を味わっていただきたいですね」と目尻を下げた。 『青春18×2 君へと続く道』はひと足先に台湾で公開中。キャスト陣・制作陣ともに自信をのぞかせる本作は5月3日(金・祝)に日本で公開されるので、ぜひ劇場で味わってほしい。 取材・文/編集部