個性派ぞろい 愛媛ご当地スーパーの世界 木村チェーンの巻
毎日の暮らしに欠かせないスーパーマーケットですが、皆さんは「お気に入りの店」がありますか? 店を選ぶ基準は何ですか? 県内のスーパー業界は今、大きく動いています。フジとイオングループのマックスバリュ西日本が経営統合し、大手連合が誕生しました。生鮮品を扱うドラッグストアの出店も相次いでいます。 大手資本の勢力拡大に伴い、昔から地域で商売をしてきた中小スーパーの苦境が伝えられています。とはいえ、厳しい中でも独自路線を模索し店舗を増やしている食品スーパーがあります。その勢いの秘密を探るべく、県内に本社を置き、チェーン展開する店を訪ねました。物価高が家計を苦しめていますが、売り手側のこだわりや舞台裏を知ると、買い物も楽しくなるかもしれません。「ご当地スーパーの世界」をのぞいてみませんか。 まずは県内のスーパーマーケットの現状から。信用調査会社帝国データバンクのデータでひもといてみましょう。 四国のスーパー主要20社の売上高は、2019年度を底に年々増加しています。21年度は6376億8500万円でした。 「新型コロナ下の巣ごもり需要でスーパーは息を吹き返した」と語るのは、帝国データバンク松山支店の豊田貴志支店長。その後も値上げラッシュの影響で売上高は増加し「22年度の数字も前年を上回っている。ただ、仕入れ値の価格転嫁が遅れている上に、人件費や光熱費の負担増などが収益を圧迫している」という実情があるようです。 豊田支店長の分析をもとに、厳しい経営環境にあっても好調を維持している「ご当地スーパー」2社を取材しました。 木村チェーン(新居浜市)とスーパー日東を運営する日東物産(松山市)です。木村チェーンは東中南予に11店舗、スーパー日東は松山市内に5店舗を展開しています。 ■気さくで身近 木村チェ-ン 木村チェーンは本部のある田所店(新居浜市田所町)をはじめ「気さくなスーパー」の看板でおなじみ。ホームページには「冷蔵庫代わり」「普段着で来て」などの表現が並び、身近さを前面に打ち出しています。 木村伸介社長(50)は、要となる生鮮3品(青果、精肉、鮮魚)へのこだわりを強調します。バイヤーや仕入れを担当する部門主任の腕の見せどころでもあります。例えば、田所店と朝生田店(松山市朝生田町6丁目)の精肉コーナーは高級和牛が充実。特殊な真空包装技術を用い、長い賞味期限を実現しました。一方で、ディスカウント宣言を行い、常時安い価格の切り落とし肉などもそろえています。 ■出店と撤退繰り返し 3月にオープンした朝生田店は県都唯一の店舗です。満を持しての進出かと思いきや、木村社長は「松山市には過去に2回、出店と撤退を繰り返してきた」と冷静。機動的な店舗戦略は同社の特色のようです。 背景には、試行錯誤を重ねてたどりついたチェーンストアの経営理論があるといいます。千坪程度の店を基本とし不採算店は思い切って閉める。決断を早くしスクラップ・アンド・ビルドで再編を繰り返しています。
愛媛新聞社