【邦楽・郷土芸能】部活動で普及継承を(10月8日)
文化庁は高校、大学の部活動やサークル活動を対象に邦楽の普及拡大推進事業を展開している。新型コロナ禍で発表の機会が大幅に減少し、継承が困難な現状が背景にある。伝統文化である邦楽や郷土芸能に親しみ、次代につなぐ県内の教育機関をさらに増やす必要があるだろう。 推進事業では、三味線、箏(そう)、尺八、和太鼓などの楽器を5年間無償で貸与し、修理やメンテナンスを行う。講師派遣、他団体や住民との交流会開催も支援する。今年度は全国で高校38校、大学8団体が採択された。 応募できるのは活動実績のある学校のみとされるが、新たに取り組む学校も対象にすべきではないか。楽器がそろい、指導者を確保できれば活動の下地ができる。貸与期間の延長など弾力的な対応も求めたい。 県内では、学校活動に協力する団体がある。その中の一つ「いわき日本音楽クラブ」は、学校で指導する会員がいるほか、コンサートを通し、発表や鑑賞の機会を提供している。今年は初の体験教室を開いた。こうした団体に対し、利用するホール賃貸料の割引制度を設けるなどして活動を後押しするのも意義深い。
推進事業の対象に、郷土芸能を加えることも裾野を広げるのに効果的だ。同じ伝統文化として共通する楽器もあり、相乗効果が期待できる。 県高校文化連盟の郷土芸能専門部に5校が加入している。相馬農高は、全校生が「相馬流れ山踊り」などに携わる活動を続けている。会津農林高生は、「早乙女踊り」の唯一の担い手として活躍している。高齢化などで奉納が難しくなった住民に代わり、伝統を次世代へ受け継ぐ心強い存在だ。こうした生徒を地元とともに県を挙げて応援したい。郷土芸能などの専門部の合同発表会が11月9日に楢葉町で開かれる。関心を持つきっかけになればと願う。 秋田県男鹿市の男鹿温泉郷では、伝統の「なまはげ」と和太鼓を融合させた迫力満点の「なまはげ太鼓」が人気だ。地元の若者らが熱演し誘客に大きく貢献している。邦楽と郷土芸能に若い感性が加われば、地域おこしの起爆剤になり得る。教育の場や課外活動での体験を通し、そうした若者が数多く生まれるよう期待したい。(三神尚子)