阪神に藤川球児は必要なのか――先発転向は可能?――
阪神がレンジャーズを自由契約となった藤川球児(34)の獲得に本腰を入れ始めているが、チームの内外から賛否両論が噴出している。本当に今の阪神に藤川が必要なのか?という議論だ。 阪神は、昨年オフから藤川の動向を追跡、米国在住の調査員を藤川の登板試合に派遣するなど、2013年6月にトミー・ジョン手術を受けた右肘の回復状況を含めて調査してきた。トミー・ジョン手術は、完全復帰できるまで3年はかかると言われている。藤川自身、レンジャースに移籍した今季、火の玉ボールの復活に手ごたえを感じていたが、開幕直前に右足付け根付近を痛めてDL入り。5月14日にやっとメジャー昇格して、ロイヤルズ戦で初登板し1イニングを三人で抑えたが、連投テストとなった翌15日のインディアンズ戦では、ホームランを含む3失点と炎上した。 阪神は、ここまでの調査の過程で、「まだ連投は無理」との判断を下している。本来ならば、ストッパー、オ・スンファンの前の1イニングを任せ、福原と共に「FFO」を形成するのが理想なのだが、そういう起用法には、まだ藤川のコンディションが耐えられないため、獲得するとなると、先発転向が前提になる。 ある評論家は、藤川の先発転向についての疑問符をなげかけていた。 「球種が少ない。カットボールを覚えているらしいが、基本は、全力投球のストレートとフォークの縦の変化で勝負するピッチャー。わかっていてもバットが空を切るというくらいの浮き上がるようなストレートがあるからフォークも生きる。しかし、先発で長いイニングとなると、ストレートを多少セーブしなければならないだろう。そこに黒田のようなコントロールと、小さな変化のボールがあると別だが、元々コントロールもなく、“えいや!”でいくタイプのピッチャーだから先発では難しい」 何人かの球界OBに意見を聞いたが、「藤川の先発転向が成功する」と、根拠を持って熱弁する人に出くわすことはなかった。 阪神のローテーションは、当初、メッセンジャー、能見、藤浪、岩田、岩本、岩崎の6人でスタートしたが、メッセンジャーが不調で、サンチアゴに代わり、岩本、岩崎も、不安定で2軍へ。ドラフト1位の横山が、21日の巨人戦で好投したが、昨年のドラフト1位の岩貞は、先発した24日の横浜DeNA戦で、制球が定まらず即、2軍落ち。期待の5人目、6人目の先発が出てきていない。チーム事情からすれば、「先発・藤川」の補強は、魅力的ではある。また藤川には、メジャーの公式球と硬いマウンドに慣れずに肘を痛めたという説もあって、日本の公式球とマウンドに帰れば、感覚を取り戻すだろうというポジティブな見込みもある。