『ブギウギ』趣里が見事に歌い上げた新曲「コペカチータ」 『らんまん』との意外なコラボ
朝ドラ『ブギウギ』(NHK総合)第76話では、『舞台よ!踊れ!』の幕が上がる。タナケンこと棚橋健二(生瀬勝久)が演出・主演、スズ子が共演する喜劇だ。 【写真】楽屋で会話をするタナケン(生瀬勝久)とスズ子(趣里) スズ子のセリフは、当初の台本から変更され全て大阪弁。ほかの演者たちの標準語の中で浮立つ、棚橋の投げかけにもワンテンポ遅れるといったスズ子の芝居が、だんだんと目が離せなくなる棚橋の言う「面白い」スズ子自身の持ち味となっている。 ワンピースからドレスに早変わりして始まるのは、羽鳥善一(草彅剛)による新曲「コペカチータ」。歌詞に〈不思議なこの歌の魅力〉とあるように、当時としては前衛的なラテン音楽が色濃く香る、転調に次ぐ転調の楽曲構成。歌手・福来スズ子としては新境地でありながら、『舞台よ!踊れ!』におけるスズ子の役割を重ね合わせた見事な選曲、そしてパフォーマンスである。 『あさイチ』(NHK総合)にて博多大吉が触れていたように、第16週「ワテはワテだす」で“タナケン編”は終了。朝ドラ『エール』に登場した作曲家・小山田耕三(志村けん)を彷彿とさせるような厳格な態度が印象的だったが、結果的にその全てはスズ子を思ってのものだと分かる。「何事も道のりは険しい。だからこそ、面白い」という一言ひとことが名言と言えるようなセリフの説得力は、生瀬勝久自身が醸し出す味だ。 一方で、小夜(富田望生)はサム(ジャック・ケネディ)とアメリカへと旅立っていった。小夜との別れを前に、スズ子は小夜が家族同然の存在であったことを実感する。ガサツなところがあるけれど苦労人で、お喋りでうるさいところもある。おせっかいばかりで、面倒なところもある。けれど、これほど優しくて、頼りになる子はほかにはいない。スズ子はそう言って、大粒の涙を流しながら、小夜と熱く抱きしめ合う。スズ子が小夜に贈ったのは、「グッドラック」の思いが込められた四つ葉のクローバー。朝ドラと四つ葉のクローバーと言えば、『べっぴんさん』や『おちょやん』が思い出されるが、今回使われた四つ葉のクローバーはバトンタッチセレモニーで『らんまん』の神木隆之介と浜辺美波から渡されたシロツメクサのレプリカ。万太郎(神木隆之介)の思いは小夜の手によってアメリカへと渡っていくという、意外なシーンでの『ブギウギ』×『らんまん』コラボとなった。 小夜とサムが一緒になったことで、スズ子と愛助(水上恒司)は結婚を意識するようになっていた。そんな折に、2人は東京にある村山興業の支社に呼び出される。トミ(小雪)から伝言を預かってきたのは、社長秘書室長の矢崎(三浦誠己)。トミにとっての懐刀だ。「ひしょしちゅちょー」と秘書室長が言えないスズ子はさておき、坂口(黒田有)を見下ろす矢崎の態度からその立場が窺い知れる。 スズ子と愛助が同棲を始めて2年。年頃の男女が籍も入れず、半端なままでは世間体が悪いため、そろそろ結婚を考えてはどうか、というまさかの伝言内容に2人は色めきたつが、そこにはまだ続きがあった。「福来さんに歌手をやめていただきたい」という言葉通りの意味だ。次週予告では、愛助をはじめ、善一や坂口までもが怒号を飛ばす中で、スズ子が出産する村西医院の看護師として役柄が発表されている東(友近)の姿も確認できる。スズ子、グッドラック!
渡辺彰浩