【独自】「熊本岸田会」が政治団体の届け出なく政治活動か 岸田文雄前首相の九州初の後援会
岸田文雄前首相の九州初の後援会「熊本岸田会」が、選挙管理委員会への政治団体の届け出をしないまま、政治活動をしていた疑いがあることが25日、分かった。金銭のやりとりもしており、届け出のない政治団体の政治資金の授受を制限した政治資金規正法に違反する可能性がある。熊本岸田会側は「任意団体との認識だった」とするが、識者は「任意団体と認めれば政治資金の透明性が確保できない」と指摘している。 熊本岸田会は2020年、岸田氏を自民党総裁に押し上げるために設立された。7月31日に熊本市で開いた初会合には、旧岸田派の熊本県関係国会議員や県議らに加え、岸田氏本人も出席。約100の企業や団体が名を連ね、21年秋の総裁選では党員・党友票の県内トップ得票を後押しした。事務局の所在地は熊本市東区の馬場成志参院議員の事務所となっている。 旧岸田派の馬場氏、藤木眞也参院議員、金子恭之衆院議員が代表などを務める政党支部と後援会の政治資金収支報告書によると、3団体は22年4月23日、懇親会費としてそれぞれ1万5千円を熊本岸田会に支出。会事務局名の領収書も添付されていた。
馬場氏の秘書で熊本岸田会の事務担当者は「熊本岸田会は金を集めるといったことを想定しない任意団体の認識だった」と釈明。岸田氏や熊本県議らが参加した22年4月の懇親会については「政治資金パーティーではなく集めた会費も全てホテル側に支払った。収入をプールしたり政治団体に寄付したりはしていない」と述べた。 類似の団体である福井県の「岸田文雄福井後援会」は届け出ている。熊本県選挙管理委員会は「一般論としてお金の出入りがなくても政治団体であるなら届け出る必要がある。届け出のない政治団体への寄付や団体からの支出があれば、規正法に抵触する可能性がある」としている。 熊本大の伊藤洋典教授(政治学)は「国会議員や県議らが集まって政治的な活動をする以上は任意団体とは言い切れない」と指摘。「このような団体が任意団体とされると、政治資金の透明性が確保されない団体が際限なく広がる可能性がある」と述べた。(小山智史)
政治団体の届け出 政治資金規正法では、政治上の主義や施策を推進する団体や、特定の公職の候補者を推薦するといった団体を政治団体と規定。政治団体には設立後7日以内に選挙管理委員会などへの届け出を義務づけている。選管への届け出がない団体は、政治活動に関する寄付を受けたり支出したりすることができない。違反すると5年以下の禁錮や100万円以下の罰金が科される可能性がある。