【週末映画コラム】歴史の「if」を描いた2本『もしも徳川家康が総理大臣になったら』/『お隣さんはヒトラー?』
【週末映画コラム】歴史の「if」を描いた2本『もしも徳川家康が総理大臣になったら』/『お隣さんはヒトラー?』 2/2
『お隣さんはヒトラー?』(7月26日公開) 1934年の東欧のある町。幸せそうなポーランド系ユダヤ人一家の日常が映る。一転、1960年の南米・コロンビア。ホロコーストで家族を失い、ただ一人生き延びたポルスキー(デビッド・ヘイマン)は、町外れの一軒家で孤独な日々を過ごしていた。 ある日、ポルスキー宅の隣の空き家にドイツ人のヘルツォーク(ウド・キア)が引っ越してくる。その青い瞳を見た瞬間、ポルスキーは、ヘルツォークが死んだはずのナチス総統・アドルフ・ヒトラーに違いないと感じた。 ポルスキーは、大使館に出向いて隣人はヒトラーだと訴えるが信じてもらえない。ならばとカメラを購入してヘルツォークの行動を盗撮し、ヒトラーに関する本を買い込んで研究し、自らの手で証拠をつかもうとする。 ヘルツォークの正体を暴こうと意気込んでいたポルスキーだったが、やがて、互いの家を行き来し、チェスを指すようになる。だが、2人の距離が少し縮まった時、ポルスキーはヘルツォークがヒトラーだと確信する場面を目撃してしまう…。 歴史の「if」の一つである、ヒトラーの「南米逃亡説」をモチーフに、実際に起こり得たかもしれない状況を大胆なアプローチで描く。 アウシュビッツ強制収容所の隣で平和な生活を送る一家の日々の営みを描いた『関心領域』(23)同様、また一つ新たな切り口のナチスによるホロコースト関連映画が誕生した。監督は、ロシア出身でイスラエル在住のユダヤ人であるレオン・プルドフスキー。 ポルスキーにとってヒトラーは憎んでも憎み切れない最大の敵。となれば彼の驚きや慌てぶりは分かるのだが、ひげを生やしサングラスを掛けたヘルツォークは、必ずしもヒトラーには似ていないように見える。だから最初はポルスキーの妄想なのではと感じさせる。それ故、証拠集めがエスカレートしていく様子はどこか滑稽に映り、コメディーのにおいがする。 そして、チェスを通して2人の間に友情らしきものが芽生え、不思議な関係に変化していくさまを見ていると、やはりポルスキーの妄想だったのかと思わせるのだが、これが終盤の“どんでん返し”に効いてくるのだから念が入っている。 この映画の最大の魅力は、ホロコーストの被害者とヒトラーが隣人になったらという奇抜な設定にあるが、ポルスキーとヘルツォークの関係の変化を見ると、一体憎むべきものとは何なのだろうと考えさせられる。プルドフスキー監督は「善と悪を単純に割り切るのは難しい」と語っている。 (田中雄二)
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