『葬送のフリーレン』ミニアニメにみるTikTokの影響力 従来の“おまけ”が効果的な宣伝に
アニメ作品の宣伝における、TikTokの効果的な活用が注目されている。最近のヒット作の中でTikTokの活用に成功した事例が『葬送のフリーレン』だ。 【写真】フェルンの手を引くフリーレン(写真多数) 日本テレビはアニメ『葬送のフリーレン』の初回放送に合わせて、TikTok広告を積極的に活用した。テレビCMを通じての番組告知も行われていたが、テレビを見ない層にもリーチするために、デジタル広告の力を借りることにしたという。TikTok広告マーケティング事例インタビューによると、次のような結果が出ているそうだ。 「今回は広告配信後に「『葬送のフリーレン』の番組を見ましたか?」と弊社でブランドリフト調査を行いました。その結果、調査に参加したTikTokユーザーの約30%が『葬送のフリーレン』の番組を見たことがわかっています。TikTokユーザーがテレビをリアルタイムで見ていることがわかったのは、私たちとしても大きな収穫でした」(※) さらに、「『葬送のフリーレン』をご存知ですか?」という質問に対しては、65%の人が作品を知っていると回答し、作品の認知が向上したことが証明された。 このように、TikTokを活用したデジタル広告は、従来のテレビCMだけでは届かない層にも効果的にアプローチし、アニメ作品の認知度を高める上で非常に有効な手段となっている。『葬送のフリーレン』の事例は、アニメ業界における新たなマーケティングの可能性を示しているのではないか。 ■TikTok等のミニアニメは強力な拡散能力を持つ TikTokをはじめとするSNSの特徴は、短い動画やテキストを通じた強力な拡散能力にある。『葬送のフリーレン』の公式アカウントでは、単なる予告編のクリップ動画だけでなく、この特性を活かした追加コンテンツも重要なポイントになっている。特に注目すべきは、約2分間のミニアニメの配信だ。 『葬送のフリーレン』は、ミニアニメ『葬送のフリーレン ~●●の魔法~』をYouTube TOHO animation チャンネル、アニメ公式X(旧Twitter)、公式TikTokにて配信している。 フリーレンたちの冒険では、戦闘シーンで活躍する迫力のある魔法だけでなく、日常生活で使われる実用的な魔法も登場する。ミニアニメでは、実用性が不明な「しつこい油汚れを落とす魔法」や「朝起きられる魔法」のようなユーモラスな魔法をテーマにしたエピソードが描かれており、これがなかなか面白い。オリジナルシナリオ且つフルボイスで楽しめるという意味でも、ミニアニメとはいえ、かなり気合を感じさせる内容に仕上がっていた。 例えば第5話の「食卓をしあわせにする魔法」篇では、『葬送のフリーレン』とミツカン「味ぽん®」との異色コラボが実現している。「何なのかな、ソースなのかな?」とフェルンが味ぽんを見つめたり、フリーレンたちが味ぽんを使って肉を焼いたり……となかなかシュールな展開になるのだが、エンドカードには生活魔法「アジポンベルド」の文字が。予想外の生活魔法の誕生に、思わず笑ってしまう。 ちなみに、その後味ぽん公式Xでは、味ぽんを使ったフリーレンのキャラ弁 「アジポンベル弁」の写真も掲載された。このような本編から外れたコラボの場としても、SNSのプラットフォームが活用されている。 ■猫猫と壬氏のやりとりが楽しめる『薬屋のひとりごと』ミニアニメ さらに、現在第2クールが放送中の『薬屋のひとりごと』でも、同じくミニアニメ形式での動画がSNSで配信中だ。『薬屋のひとりごと』のミニアニメ『猫猫のひとりごと』では、各エピソードで重要な役割を果たしたキーアイテムについて、主人公の猫猫が解説する後日談が描かれる。デフォルメされたキャラクターで、猫猫と壬氏の本編では見られないようなユニークなやり取りやエピソードが楽しめるのが特徴で、『葬送のフリーレン』とはまた内容の感じは異なるが、こちらも無料で視聴できるミニアニメとしてはクオリティが高い。 従来、Blu-rayなどのパッケージ特典などで提供されていた「おまけ」要素に当たるコンテンツが、現在では無料でアクセス可能なSNSプラットフォーム上で公開されることが増えているとも考えられるこの流れだが、Z世代を中心とするTikTokの人気を考慮すると頷ける部分は大きい。新しいファン層をどのように獲得するかという観点を考えると、今後のSNSプラットフォームとアニメ作品との距離には見えてくるものがありそうだ。 ■参考 ※ https://markezine.jp/article/detail/44232?p=3
すなくじら