アサド政権崩壊で欧州諸国が方針見直し、強制送還恐れるシリア難民 祖国の再建見通し立たず不安も
ナジェム・アル=ムーサさん一家は、ギリシャ・アテネのアパートでシリアのアサド政権の崩壊を知らせるニュースに釘付けになっていた。2015年に逃れたシリアの政権崩壊を喜ぶ一方、強制送還されるのではないかという不安も抱えている。 「子どもたちは、いつか友人や先生、慣れ親しんだ場所を離れてシリアに戻ることなど、全く想像できていない。この話をすると『パパ、本当にここにまた住めるの?』と質問してくる」 ムーサさんらは2年間でスーダン、イラン、トルコを経由し、ギリシャに到着した。 EUのデータによると、シリア難民の申請件数は2015ー16年に最多に。各年で33万件を超えた。壊滅的な地震や暴力、経済的苦境が続き、2020ー23年には3倍に増加した。 欧州諸国はアサド政権の崩壊を受け、シリア難民への政策を見直し始めている。数千件の申請が保留状態にある。 ムーサさんの在留許可は更新期限が迫り、一家はシリアへの強制帰国を恐れている。 「帰国する以外に解決策はない。在留許可を更新できなければ祖国に帰るしかない。他に行く場所はない」 今週、隣国トルコやレバノンに避難していた数千人が、平和的な帰国になることを望み、シリアへ急いだ。 12年前にドイツに避難したアハメド・アッバスさんは、帰国の必要を強く感じている。ただ、シリアの今後は依然不透明で、今が適切なタイミングか決めかねている。 「『1ー2週間帰国して、大丈夫なら残る』という人もいるだろう。そうでなければ、ドイツに戻る。ドイツ政府が実際に人を派遣し、国の再建を確認すべきではないだろうか。今のところ、シリアには基本的な法律がない。自由な国を手に入れ、人々は民主主義を望んでいる。だが、まだ新しい法律を見ていない」 2011年以降、アサド政権と複数の反政府勢力による内戦で数十万人が死亡。爆撃により都市全体が破壊され、経済も悲惨な状態だ。数百万人が避難中もしくは、人道支援が必要な状態にある。