4日にも復活の大谷翔平はなぜ手術を回避して打者復帰を優先させたのか
人によって物の見方は異なる。 先入観や置かれた立場、そうであって欲しいという願望など理由は様々だが、今回、大谷翔平(エンゼルス)の右ひじ側副靭帯の再検査の結果を巡っては、日米で百家争鳴となった。数日経った今は、早くも復帰時期を巡る議論が、かまびすしい。早ければ3日(日本時間4日)のマリナーズ戦で復帰か? などとも報じられている。それでも、その28日(同29日)に行われた再検査の結果に関して、打撃練習解禁が最大のニュースという点で、見方は一致する。 同日、エンゼルスのビリー・エプラーGMは電話会見で「通常の打撃練習は問題ない。順調なら、週末にも実戦形式の打撃練習を行う」と発表。打撃による靭帯への影響についても質問が飛んだが、「その点については、ドクターに質問を変えながら何度も確認したが、大丈夫と言われた」とのこと。 大谷は早速、28、29日に打撃練習を行い、予定通り30日、7月1日(同2日)にアナハイムで実際の投手を相手に打席に立った。7月2日(同3日)も同様の調整を続ける見込みで、こうした一連の経過は、地元メディアのみならず、米経済誌の「フォーブス」(電子版)が伝えるほど。自ずと関心の高さが知れる。 もっとも、程度にもよるが、通常の打撃に関わる動きの中で、靭帯に強い負荷がかかる場面は、「まずない」という。大谷の場合、部分断裂が明らかとなった6月7日(同8日)の段階でも、「指名打者であれば問題ない」と診断されており、今回の流れは既定路線だったーー。 3日以降に関しては、「状態を見ながら」(エプラーGM)としているが、マイナーリーグでのリハビリは必要ないと話しているだけに、復帰までそれほど時間はかからないのかもしれない。遅くとも6日(同7日)から始まるホームスタンドが視野に入る。
その一方で、投球練習の再開は見送られた。エプラーGMによれば、「3週間後に再検査し、その結果を見て今後を判断する」とのことだが、これをどう解釈するか。 あるア・リーグ東地区のスカウトに聞くと、「今年はもう、投げさせないのかもしれない」と話し、こう続けた。 「無理をさせる必要もない」 エプラーGMは、「PRP注射による治療は、今季中の投手復帰を考えてのこと」と改めて説明し、表向きは後半戦での復帰を諦めていないが、仮に次回の検査で投球練習再開のゴーサインが出たとしても、おそらく実戦復帰は9月に入ってから。プレーオフ争いからすでに脱落しているような現状で、数回先発させるために復帰させる意味はあるのか、というロジックはもっともだ。あくまでも来季を見据え、今は大事を取るーー。 他方、思ったほどPRP注射の効果はなく、回復が遅れているという捉え方もある。ただ、そうだとしても「判断を焦る必要はない」と指摘するのはア・リーグ中地区のスカウトだ。 「7月にトミー・ジョン手術を受けても、10月にメスを入れても、おそらく復帰は2020年の開幕。じっくり回復具合を見極めてからでも遅くない」 むしろその間、指名打者としてまとまった打席に立てることは、前向きな要素でもある。二刀流選手の場合、こうした応用が効く。 もちろん、やはり手術が必要なのではという見方も燻る。打者としての復帰が実現したところで、手術の回避が決まったわけではない。しかし、手術を避けられないとしても、中地区のスカウトが指摘したように、今すぐその決断を下す必要はなく、10月まで待っても、投手としての復帰時期は、再来年の4月で動かない。ならば、ここでも打者・大谷を生かさない手はない。 このあたりは、二刀流選手のユニークなところ。