日本では「5分の1」の世帯が貧困!? 貯蓄100万円未満の世帯はどのくらい? 母子世帯で「生活が苦しい」は7割超え
日本国民の貧しさについて問題になることが多い昨今、「相対的貧困率が先進国で最悪」というニュースも耳にします。では実際に生活が苦しい人は、どれくらいいるのでしょうか? 本記事では、特に貯蓄について注目し、日本の貧困の状況を調査しました。
国民の1/5が貯蓄100万円未満
厚生労働省は3年ごとに大規模な調査を行っています。その結果は国民生活基礎調査にまとめられており、国民生活の基礎的事項を知ることができます。今回注目したのは、調査の中でも「各種世帯の所得等の状況(2022年)」です(図表1)。 図表1
厚生労働省 国民生活基礎調査 2022年 各種世帯の所得等の状況 各種世帯の貯蓄額階級別構成割合より抜粋 「貯蓄がない」と回答した割合は全世帯の11%、貯蓄「50万円未満」が4.3%、「50~100万円」が3.4%となっています。つまり貯蓄100万円未満の世帯は、合計で18.7%というわけです。日本全国で5分の1から6分の1の世帯が貯蓄100万円未満という事実に驚かされます。 これは全世帯の割合ですが、高齢者世帯に限ってみれば17.7%、児童のいる世帯は16.5%、母子世帯は41.6%の世帯が貯蓄100万円未満、という結果になっています。
「生活が苦しい」世帯は半数以上、母子世帯は7割超え
同上の調査では、生活意識についても統計を取っています。2022年の調査結果によると、生活にゆとりがあるかどうかという質問に対し「大変苦しい」「苦しい」の回答が合計51.3%で半数以上を占めています。 「普通」は42.1%、「大変ゆとりがある」「ゆとりがある」の合計はわずか合計6.6%のみでした。特に母子世帯の結果がひどく、「大変苦しい」「苦しい」と回答した世帯の合計は75.2%にのぼります。
貧困の世界基準とは
前項までは貯蓄額と生活意識の話題ですが、「貯蓄が少ない」=貧困、というわけではありません。貧困とはどんな条件で定義づけられるものなのかを見てみましょう。国際機関である経済協力開発機構(OECD)では相対的貧困率(単に貧困率ともいう)を以下のように定めています。 【相対的貧困率(OECD基準)】 所得が貧困線を下回っている人の割合のこと。貧困線は、全人口の家計所得中央値の半分。 【貧困線】 等価可処分所得の中央値の半分の額。等価可処分所得とは、世帯の可処分所得(収入から税金・社会保険料等を除いた、いわゆる手取り収入)を世帯人員の平方根で割って調整した所得のこと。 つまり貧困とは所得によって決まるもので、貯蓄は関係ないのです。貧困率・貧困線は都度変わり、2021年時点では貧困率15.4%、貧困線127万円となっています。貯蓄が100万円未満であっても、年収が127万円を下回らなければ貧困とはいいません。 相対的貧困に対して絶対的貧困は、最低限の衣食住が所得で賄えない状態のことをいいます。主に開発途上国に対して使われる用語で、世界銀行の定めによると「1日に2.15ドル未満の生活」を送る人です。これを日本円に換算してみます。 【絶対的貧困】 1ドル150円(2023年11月執筆時点) 2.15ドル×150円×30日=月9675円 月9675円未満で生活を送っている人が「絶対的貧困」にあたります。