米連邦最高裁の判断によって、大混乱に陥る可能性もある「米大統領選」
連邦最高裁判所の判断を見極めた上で今後の選挙戦の展開を考えるニッキー・ヘイリー氏
飯田)それだと、当時出した大統領令の正当性にまで疑問符がついてしまいますよね。 須田)法律の専門家からすれば、そのようなことは認められない。トランプさんが判事に任命した人が何人もいて、保守派が過半数以上を占める連邦最高裁判所ですが、さすがにそのような判断は下せないと思います。場合によっては数週間以内に結果が出ますが、そのような判決が下されたら大混乱に陥るでしょうね。おそらくニッキー・ヘイリー氏はその辺りを見極めた上で、選挙戦の展開を考えているのです。 飯田)撤退するかどうかも含めて。
米連邦控訴裁判所もトランプ氏の免責特権を認めず
須田)コロラド州の最高裁判所はトランプ氏に関し、コロラド州予備選への出馬資格を認めないという判断を下しました。当然、それを不服とし、トランプ陣営は連邦最高裁判所に持ち込みましたが、その前に「控訴は適切なのかどうか」と連邦控訴裁判所に持ち込んだのです。これは時間稼ぎだったのですね。しかし、控訴裁判所も大統領の免責特権を認めず、2020年の大統領選の結果を覆そうと企てた罪で「起訴され得る」との判断を下した。
ブッシュ対ゴア連邦最高裁判決
飯田)そうなると、今度はヘイリーさんしか候補がいなくなる可能性もありますか? 須田)あります。ヘイリー氏はその1点に賭けているのです。ただ、コーク氏が撤退したということは、連邦最高裁も認めないのではないかと思いますが、これは禍根を残します。大統領選挙によって禍根を残した過去のケースに、ブッシュ対ゴア事件があります。当時も連邦最高裁に持ち込まれたのですが、これはこの件だけに限ります。なぜならアメリカの裁判制度は判例法主義であり、判例の積み重ねですから、「その件だけに限る」となると、これはこれで法学者などの批判を浴びるのです。 飯田)「判例として積み上がらない例外をつくってどうするのだ」ということですね。法の例外をつくることになる。これが判例として積み上がってしまうと、今度は宣誓を拒否して逃げ回る人たちがたくさん出てくるかも知れない。 須田)そうです。だから非常に悩ましいのです。 飯田)行政が全部成り立たなくなる可能性もありますよね。