イスラエル、イラン軍事施設を攻撃 イランは自衛権を主張
イスラエル軍は26日未明(日本時間同日朝)、「イランの軍事標的に対する精密攻撃」を実施していると発表した。イラン防空当局は声明で、イスラエルがイラン北部テヘラン、南西部フゼスタン、西部イラムの3州にある軍事施設を攻撃し、複数の場所が限定的な被害を受けたと発表した。イラン陸軍によると、兵士2人が死亡した。 イラン外務省は26日午後、イスラエルの攻撃は国際法違反だと非難し、イランには自衛する権利と義務があると述べた。 ■イスラエルの主張 イスラエル国防軍のダニエル・ハガリ報道官はビデオ声明で、「イランの独裁政権がイスラエル国家に対して何カ月も継続的に攻撃を重ねてきたことに対応して、イスラエル国防軍は現在、イランの軍事標的に対する精密攻撃を実施している」と述べた。 「イランの独裁政権と、この地域の各地にいるイランの代理勢力は、(昨年)10月7日以来、7つの前線から、イスラエルを絶え間なく攻撃してきた。これには、イラン国土からの直接攻撃も含まれる」とハガリ少将は続けた。 報道官はさらに、「世界のほかのあらゆる主権国家と同様、イスラエルには対抗する権利と義務がある。我々の防衛力と攻撃力は全面的に動員済みだ。イスラエル国家とイスラエル国民を守る為、必要なことは何でも行う」と述べた。 イスラエル軍は同日午前6時(日本時間同日正午)ごろ、この攻撃作戦は終了したと発表。「イスラエル国防軍は、イランの複数箇所にある軍事標的に対する精密な攻撃を完了した」、「わが軍の航空機はいずれも無事に帰還した」と発表した。 イスラエル軍はこの日の攻撃を、インテリジェンスに基づいて行ったと説明。イスラエル軍機は、イランが昨年イスラエルに向けて発射したミサイルの製造に使われた施設を攻撃したのだという。 「同時にイスラエル国防軍は、地対空ミサイル設備や、イランにおけるイスラエル軍の航空作戦を制限することが目的のイランの空中能力を攻撃した」という。 ■イラン国内では イラン外務省は26日午後、イスラエルによる攻撃は「明確な」国際法違反だと非難。国連加盟国の自衛権を定めた国連憲章第51条をあげ、「イラン・イスラム共和国は、外国の侵略行為に対して自らを守る権利と義務があると考える」と述べた。 イラン国営メディアIRNAによると、イラン陸軍は26日午前に声明で、「シオニスト独裁政権の犯罪者たちが発射した飛翔物に対抗していた、兵士2人が犠牲になった」と明らかにした。 これに先立ちイラン防空当局は声明で、イスラエルがイラン北部テヘラン、南西部フゼスタン、西部イラムの3州にある軍事施設を攻撃し、複数の場所が限定的な被害を受けたと発表していた。 同当局は、イスラエルの攻撃には無事に対抗したものの、一部の場所で「限定的な被害」があると述べていた。 イランの支援を受けてパレスチナ自治区ガザ地区で活動するイスラム組織ハマスは26日午前、「最も強い表現」でイスラエルを非難すると声明を出し、イスラエルの攻撃は「イランの国家主権を甚だしく侵害する」もので、「地域の安全保障を標的にしたエスカレーション」だとした。 そのうえでハマスは、イランがイスラエルによる攻撃の影響を「無効化することに成功した」と説明。さらに、パレスチナの人々と大義に対するイランの支援に「感謝する」と述べた。 イラン国営メディアによると、イランはいったん領空を封鎖し、航空機の発着を中断したものの、26日朝には再開したという。 イラン革命防衛隊に近い通信社は、テヘランの西や南西にある軍事基地が標的にされたと伝えた。 シリア国営通信社は、シリア中部や南部の軍事拠点が攻撃されたものの、迎撃したと伝えた。 BBCペルシャ語のバフマン・カルバシ記者によると、イラン国営テレビはイスラエルの攻撃による実質的な被害はなく、攻撃は失敗だったと伝えている。これはイランが攻撃された際の典型的な反応だと記者は説明する。 「これはイランにとって、やられたらやり返すという今の状況を、面子を失わずに終わらせる方法になるかもしれない」ものの、攻撃による被害の規模が大きければ、あるいは死者が出れば、この対応方法は破綻するかもしれないとカルバシ記者は指摘する。 BBCのジェレミー・ボウエン国際編集長は、「ジョー・バイデン米大統領はイスラエルに、イランの核開発、石油、天然ガス施設を攻撃しないよう促していた。イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は今回は、その助言を聞き入れたようだ」と指摘。「アメリカは、軍事施設に攻撃対象を限定したことで、イランが報復攻撃を重ねずに済むことを期待している」という。 ■アメリカは アメリカ国家安全保障会議(NSC)の報道官は、「イスラエルが自衛権の行使として、そして10月1日にイランが弾道ミサイルでイスラエルを攻撃したことへの反応として、イランを攻撃しているという理解だ」と、BBCが提携する米CBSに述べた。 CBSによると、ジョー・バイデン米大統領は「状況の報告を受け、展開を注視している」という。ロイター通信によると、カマラ・ハリス副大統領も遊説先のテキサス州で報告を受けた。 アメリカの国防関係者はBBCに対して、イスラエルによるこの日のイラン攻撃にアメリカは関わっていないと話した。ただし、攻撃実施前にアメリカ政府は知らされていたという。 アメリカ政府幹部やイギリスのキア・スターマー首相はイランに対し、反撃しないよう呼び掛けている。 (英語記事 Israel launches air strikes on Iran)
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