無いもの尽くしの小さな組織 ローカルからヒットを狙う方法を公開インタビュー
サラリーマン人生から、なぜ家業を継ぐ決断をしたのか。
■オカビズ10年 「顧客を創造する」視点 ──一方、秋元さんはオカビズでは開所から10年で3800社、2万5000件もの相談を受けてきたと聞いています。どんな支援をされているのでしょうか。 秋元:オカビズの支援事例をいくつかご紹介したいと思います。 例えば、釜揚げうどんの発祥とも言われる岡崎の有名店、大正庵釜春からのご相談です。お土産として、うどんを売れないかということでした。香川の讃岐うどん、群馬の水沢うどん、有名どころが色々ありますね。それらならお土産に買って帰りますが、岡崎だとそれが難しい。 お土産として買って帰るにはこの町ならではのエピソードがいるだろうと考えました。そこで、地元の図書館で調べてみると、家康公はうどんが大好きだったという史実が出てきたんです。これだ!と「家康公が愛したうどん」という名前でいわば復刻版を作りました。特に昨年の家康公の大河ドラマのトレンドに乗って注目を集め、いまやバカ売れです。 昨年の家康公の大河ドラマのトレンドに乗って注目を集め、いまやバカ売れです。 他にも、日本3大石材産地である岡崎の老舗・稲垣石材店の事例もお伝えします。同社のアトツギである稲垣遼太さんから、墓石を作る際にでる端材をどうにか活用できないかと相談を受けました。 ディスカッションする中で、「これは石の切れ端ではなく、最高級の国産御影石だ」と価値を見出し、これを使って高級飲食店をターゲットに上質なお皿として展開をしようと考えました。1年そこそこで墓石以外のお皿や内装品の売り上げが、会社全体の1割を超えるまでに成長したんです。 顧客への解像度を高め「お客さんのニーズに応える商品をどうしたら作れるか」を考えることはもちろんですが、一方で、新たな切り口を打ち出すことで「顧客を創造する」ことを重視しています。 ■製缶メーカー6代目 アトツギの本心 ──実は、宝は皆さんの足元にも落ちているということですね。石川さんは10年間、日本政策金融公庫にお勤めで数千社もの決算書と会社の中身をご覧になってきました。家業に戻られるきっかけは何でしたか? 石川:正直、跡を継ぐことはそこまで考えていませんでしたが、長男なので継ぐかもしれないという気持ちはどこかでありました。父親が中小企業経営者をしている姿を見てきたので、前職ではそういう立場を支援する仕事で罪滅ぼしをしている感覚はありましたね。 今は元気なんですが、父親が体調を崩したことがきっかけでした。 継ぐ人がいないからと家業を廃業すれば、僕にはサラリーマン人生があるけれど、僕の人生を支えてくれていた人たちがどこに行くかわからないと思ったんです。そうした方々の上に自分の人生が立つことに対して、自分が定年を迎えた時にすごく嫌だろうなと思ったのが決め手になりました。