【アメリカから見たTPP(1)】世界最大の協定は日本を救うか?
米プリンストン大学で行われたクリスティーナ・デイビス教授へのインタビュー(マシュー・コラサ撮影)
環太平洋経済連携協定(TPP)は、世界貿易機関(WTO)が設立されて以来、最大の国際貿易協定だ。オバマ大統領と安倍首相はともにTPP協定を、自国にとって「後世に残る大きな勝利」だと褒めちぎっている。TPPは、日米両国や世界経済の将来にどう影響するのだろうか。米プリンストン大学のウッドロー・ウィルソン国際公共政策大学院教授で、日米関係と国際貿易の主な専門家のクリスティーナ・デイビス教授に聞いた。
オバマ政権の優先課題だった「貿易拡大」
TPPはアメリカにとってどのような意味を持つのだろうか。デイビス教授は「TPPは、経済の先行きの見えないアメリカにとって、経済的利益をもたらす重要な合意です」と語る。「オバマ大統領は長い間、アメリカの輸出拡大を政権の優先課題としてきました。オバマ大統領は、TPPはアメリカの輸出業者にとって、より大きな市場へのアクセスをもたらすものだと考えています」 TPPの合意はアメリカにとって、他の11カ国の加盟国に対し、農産物から医薬品、乳製品、自動車にいたるまで、アメリカの製品に対する関税や規制障壁を下げるものとなる。オバマ大統領の属する民主党や一部の共和党議員から批判はあるものの、TPPは今年の採決で議会を通過するだろうと言われている。
TPPは日本の構造改革を進める
では、TPPは日本にとってはどのような意味を持つのだろうか。デイビス教授は、TPPはアベノミクスによる日本の構造改革を進めるだろうと予測している。「アベノミクスの『3本の矢』の中で、構造改革が最も難しいということが知られています。TPPは日本の構造改革に貢献するので、安倍首相は、TPPが再び不況に陥る瀬戸際にある日本経済を前進させるためのものであると、日本国民に対してアピールするでしょう」 デイビス教授は、安倍首相が今後国民に対して行うであろう説明は「TPP加盟国のより大きな市場にアクセスできることで得られる日本の経済的利益や、消費者のコストが下がること、輸入が増えることは必ずしも日本にとってマイナスではないという点を強調するものとなるでしょう」と予測する。一方で、デイビス教授は「TPPをめぐる日本の報道は、ほとんどが『消費者のコストが下がる』ことに注目していることが極めて興味深い」と語る。