プロ将棋界最年長71歳 青野九段(焼津出身)現役終幕懸けた戦いへ 「集大成の将棋を」
プロ将棋界最年長で焼津市出身の青野照市九段(71)の現役生活終幕が迫っている。6月13日に始まる竜王戦6組昇級者決定戦で黒星を喫した時点で引退となる。21歳のプロ入り後、半世紀を超えた棋士人生。最後の対局に向けて青野九段は「あまりむきになるものでもない。集大成となる将棋を指せれば」と話した。 祖父の影響で幼少期から将棋に親しんでいたが、プロ入りを志したのは自身が「プロになろうってのが間違いってぐらい遅い」と語る中3の秋。「どうしてもなりたい」と静岡市在住の広津久雄九段(当時八段、1923~2008年)に直談判すると「学校行くか、将棋やるか」の2択を迫られた。成績が良く先生や周囲から進学を勧められたが将棋を選んだ。15歳で上京し、奨励会入りした。 奨励会では将棋会館に寝泊まりする「塾生」として働いた。選ばれたエリートとも呼ばれたが、買い出しやマージャンの準備に使われる下働きに近い扱いだった。だが「棋譜はいくらでも手に入った。対局を繰り返した」。1974年、四段に昇格しプロとなった。 影響を受けた棋士に真部一男九段、山田道美九段(ともに故人)を挙げる。感覚派の実力者だった真部九段と出会ってリアルタイムで考える「感じる力」の重要性を痛感し、山田九段の「われわれは将棋が強い以外に誇れるところがない」との言葉を胸に刻む。 年を重ね棋士としての技量が磨かれる一方、体力は衰えを見せた。対局を終えて家に帰ると動けなくなることもあった。2017年度にB級からC級に降格した際も引退が頭をよぎった。しかし「800勝」「現役50年」の達成に向け、戦い続けることを選んだ。 2月のテレビ対局で将棋栄誉敢闘賞が贈られる通算800勝を達成。4月に現役50年の節目を迎えた。「800勝は26人いるが、現役50年はもっと少ない。記録に届いて良かった」。目標に達し引退が迫っても残された対局をきっちり指しきる。青野九段は「(序盤の)昼過ぎに負けるようなだらしない姿だけは見せたくない」と誇りを示した。
静岡新聞社